09/29の日記

21:36
ERQ-6サンプル
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※冒頭


 土方が根城としている司書室の窓からは、武道場が良く見える。司書室と図書室はドア一枚で繋がっており、土方が一日の殆どを過ごす特別棟の二階に位置していた。
 特別教室の集まるこの棟と武道場の間には裏庭とも呼べないスペースがあり、そこに手洗い場が設置されている。武道場で部活をしている生徒たちは、部活後や休憩中にはその手洗い場を使うのが常のようだった。
 学校司書として働く土方は朝に出勤し、蔵書整理をしていた手を止めて、図書室から司書室へと移動する。
 そろそろ朝練をしていた生徒たちが、武道場から出てくる時間だ。朝練を早めに終えた生徒は、既に着替えて教室に行き始めているが、土方の目的である生徒はそんなに真面目ではない。
 ゆったりと窓に近寄り、組んだ両腕を窓枠に乗せて、その上に顎を乗せた。上半身を屈めた所為で背中が丸まり不恰好だが、特に見咎められる心配もないので、土方は眼鏡のレンズ越しに窓の外へ、のんびりと視線を投げる。
 すると思惑通り、殆どの生徒が教室に向かった後に、まだ道着に袴姿のまま着替えてすらいない生徒が武道場から出てきた。凛とした雰囲気になる筈の剣道着なのに、どことなくだらしない印象の生徒は、まっすぐに手洗い場に向かうと、頭から水を被った。
 遠目からでも分かるふわふわくるくるとした天パは珍しい銀色。今は水を浴びて多少大人しくなっているものの、乾いたらすぐにあちこち跳ねてしまうだろう。
 気持ち良さそうに水を浴びている生徒の名を、坂田銀時という。
 一年生の時に、じゃんけんに負けて嫌々図書委員になり、二年生の今は自ら立候補して図書委員となった。恐らく、来年も立候補するのだろう。
 嫌々だったのに、何故今年は立候補したのか。理由は簡単。この高校の司書が、土方だからだ。
 顔も頭もびしょ濡れにした坂田が、首に掛けていたタオルで乱暴に水気を拭い始める。そして、ふと顔を上げ、ようやく土方の存在に気付いた。目を丸くして驚いたのは一瞬で、土方を見つけた坂田の表情はパッと明るくなる。
「先生ー!!」
 ぶんぶん手を振りながら自分を呼ぶ生徒に、思わず頬が緩みかける。しかし、殆どの生徒が教室へ行ってしまったとはいえ、無人ではない。人差し指を唇の前に立てて、静かにしろとジェスチャーで伝えれば、坂田は慌てて両手で口を塞いで見せた。しかし、土方と話がしたくて堪らないのか、坂田は声を出さずに口をパクパク動かして何か喋っている。
「?」
 しかし、何を言っているのか分からない。口を動かすのが早いから、読み取れないのだ。分からん、という意思表示に首を傾げてみせると、一音ずつ区切り始めた。
 ――――きょ・う・いっ・て・い・い・?
 唇の動きから察するに、そう言っているのだろう。因みに、今日は図書委員会議は無いし、図書室当番は坂田ではない。図書委員のくせに本をよく読む性格でもないから、本を借りに来るという訳でもないだろう。
 土方に会いに行ってもいいかと、坂田は訊いているのだ。
「…………」
 土方が良しと言わずとも、毎日押し掛けてくるくせに何を今更。そう思ったが、必死な様子の坂田が可笑しくて、少し揶揄ってやることにする。
 暫し間を空けて、土方はスル…、と親指で唇をなぞってみせた。坂田が怯んだ様子を見せるのに内心で笑いを誘われながら、なぞった指で下唇を軽く押す。その仕草に何を思いだしたのか、真っ赤になってあわあわ手を振り、坂田は脱兎の如く駆け去った。
「ふっ、くく……っ」
 初々しい坂田の反応に、思わず笑ってしまう。多分、了承の意は伝わった筈だ。
 坂田のあの過剰な反応には、ワケがある。殊更に唇を意識させる仕草。それが先日の出来事を坂田に連想させたのだ。
 この間、坂田とキスをした。
 何をトチ狂ったか知らないが、坂田に好きだ好きだと猛烈なアプローチを受け続けて一年以上が過ぎた。十近く年下の男。おまけに生徒と教師という関係でどうこうなるなんざ有り得ない、とばっさり切り捨てたにも拘らず、坂田は今も懲りずに土方を好きだと言い続けている。
 若いな、と眩しく思うと同時に、どうせ一時の熱情だろうと冷めた目で坂田を見る自分がいた。今はほぼ毎日会える環境が用意されている。高校生でいる間はその熱情が続いても、卒業したらお終いだろう。司書という生徒との関わりが少ない立場だが、若い男性教諭というだけで、その手の告白は何度か受けた事がある。いずれもその場で断り、殆どの生徒は納得してくれた。納得するどころか、絶対オトしてみせっからな! と闘志を燃やされたのは初めてである。
 最初は律儀に何度も断っていたのだが、次第に面倒くさくなり、今は適当にあしらうだけだ。いつもつれない態度しか取らない土方に懐いてくる坂田に、気まぐれに優しくすれば期待以上の反応を返してくれて。まるで犬のように見えない尻尾を振って喜びを表す坂田に、土方は半ば絆され掛けていた。
 もちろん、そんなことは絶対に言ってやらないが。
 坂田の気持ちに応えるつもりはない。けれど、坂田に好きだと言われて懐かれている今の状況が居心地良く感じているのも、また事実だった。
 キスをしたのも、ほんの気まぐれ。
 触れるだけの、淡いキス。
 何故、あんな事をしてしまったのか自分でも分からないくらい、衝動的なものだった。
 自分に向けられる笑顔が可愛かった。ただそれだけだったのだが、土方の行動は坂田を大いに喜ばせた。
 しくじったと思ったのは一瞬。土方はその一件以来、思わせぶりな態度で坂田の反応を楽しむようになった。
 ――――悪いオトナに引っ掛かったな、坂田。
















※エロシーン


 図書室の床に押し倒され、時を経た本の匂いが鼻を衝く。書架の陰になって、窓から僅かばかり届いていた武道場の光も殆ど遮られてしまった。
 けれど、互いの表情が読み取れるくらいには闇に目が慣れていて、土方の目には見たくもない光景が映し出されている。
「あ、ぁっ……やっ、やめ、ンンッ……」
 視線を正面に向ければ、見慣れた図書室の天井。下に向ければ、坂田の銀髪が土方の股間に埋まっていて、その事実を否定したくて何度も目を閉じるけれど、強烈な快感で反射的に見開いてしまう。
 キスをされて胸を弄られて、ほんの少ししか反応していなかった筈の土方の性器は今、坂田の口の中で痛いくらい興奮して勃起していた。
 生温かい舌がぬるぬると性器を這う。満遍なく唾液を塗され、指であちこち探られ、土方が小さく反応を返す場所を見つけてはしつこく弄られた。嫌だと暴れようにも急所を捕えられていては、抵抗も弱々しいものにしかならず、下衣は既に全て取り去られてしまっている。
 はだけたワイシャツだけを纏った格好が恥ずかしいと思う余裕も無く、陰部を嬲る坂田に喘がされた。先端の小さな孔を舌先で抉られると、両足の間に坂田を挟み込んだ坂田の身体をつい締め付けてしまう。
「はぁ、はっ……あっ、も、さかた……ッ!!」
 出る、と殆ど吐息のような声で訴えれば、促すように強く吸い上げられて、土方はびくびくと腰を震わせながら坂田の口の中に達してしまった。
「……先生、溜まってた? 二回目にしちゃ多いし濃い」
「う、るせ……」
 そう。土方が達するのは二度目だ。乳首を指と舌で、性器を手で同時に弄られ、土方は早々に一度達していた。なのに、まるでヤりたい盛りの高校生のように、立て続けに追い上げられてなお、身体が熱くて堪らない。自分の身体なのに、制御が利かない。暴走してしまっているようだった。
 皮膚が過敏になっていて、坂田が宥めるように腰を撫でてくるのでさえ、土方は快感として受け取ってしまう。
「も、触ん、な……」
「何で? 感じすぎて辛い?」
 先生が敏感で嬉しいよ、と酷く愉しそうに囁いて、坂田はキスを仕掛けてきた。何度も唇を重ねられ、舌を絡められた所為で、坂田のやり方に順応し始めた土方は、ついキスに応えてしまう。舌先に独特の苦みを感じたが、すぐに気にならなくなるほど唾液が溢れた。
 二度も精液を吐き出した土方の陰部は白濁でドロドロになっている。一度目は手でイカされた為、精液は腹や胸にまで飛び散っていて、坂田はまだ乾いていない白濁を塗り拡げるように下腹から萎えた土方の性器を弄び始めた。
「ん、んふぁ、ぁ……やめ、も、う……」
 連続でイッた所為で、体力を消耗している。流石に三度目は無理だと、ゆるく首を振るのに、坂田は素知らぬ振りで土方の性器を摘んだり扱いたりと、容赦なく刺激を与えてきた。無理やり快感を引きずり出され、性懲りもなく土方の性器が硬くなり始める。
 土方のモノが反応したのを確かめると、坂田は弄っていた性器から更に下へと手を移動させた。イッた余韻に加えて新たな刺激を与えられて、再び快感を追いかけ始めていた土方は、咄嗟に何をされているか分からない。
「さか、なに……あっ?」
 布越しに触れたきり、放置されていた後孔に濡れた何かが触れた。快感に力が抜けていたソコは、触られたことで緊張し、きゅっと窄まる。
 戸惑う土方を余所に、後孔をぐにぐにと揉み解すようにされ、触れているのが坂田の指だと分かった。しかし、分かった所でどうにかなる訳では無く、他人に排泄器官を触られる気持ち悪さに土方は眉間に皺を寄せる。
「坂田、ソコやめろ……」
「イヤ?」
「気持ち悪ィ」
「……それだけじゃないんじゃね?」
「は?」
 転がったまま、つい首を傾げた所為で汗で肌に張り付いていた髪が、床の上に散らばった。土方の疑問には答えず、坂田の指が動き始める。
「ン……っ」
 指の腹で後孔の皺をなぞるように撫でられたり、そのまま中に入ってしまうのではないかと不安になるほど強く押されたりするうちに、気持ち悪さとは別にむず痒さを感じてきた。落ち着かないその感覚に腰を捩ると、動くなと言うように坂田の手が、頭を擡げている土方のモノを握り込んでくる。
「ぅ、んっ」
 性器からの快感に混ざって、後孔への刺激で齎される感覚がじわじわと熱を帯びてきた。坂田の言う通り、気持ち悪かったりむず痒いだけではない、覚えのある感覚。いつの間にか後孔への刺激が快感に変わりつつあることに気付いて、土方は動揺した。
「……ん、は……ぁっ」 
 執拗に指で嬲られた所為で緩み始めた後孔に、指がつぷりと押し入ってくる。肉の輪が指の形に歪められる感触に、ぞわっと肌が粟立った。無遠慮に奥へと進む指を、土方の後孔はさほど抵抗も無く受け入れていく。二度の射精と、先ほどまでの快感で身体から力が抜けていた所為だろうか。指の根元まで呑み込み、内側から粘膜をぐるりと探られる感触に、土方は浅い呼吸を繰り返した。
「痛くは……ねーみたいだな。先生のココ、全然萎えてねーし」
「ひぅ……っ!」
 くちゅくちゅと小さな水音を立てて後孔を弄りながら、はしたなく蜜を零し始めた性器の先端に歯を立てられて、土方は背を仰け反らせる。
「それとも痛いのも好きだったりする?」
「ぃっ、あ、あっ!」
 まだ硬さを残した後孔に、強引に二本目の指が挿入されて、生理的な涙が溢れた。突っ込んだまま、中を探るだけだった指が二本になった事で、抽挿する動きが加わる。狭い中を押し広げられ、抜き差ししながら時折ぐっと強く押された。圧迫される苦しさも、引き攣れるような痛みも確かにあるのに、土方の身体は何故か興奮していて、もう訳が分からないと土方は首を振る。

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