アズカバンの囚人
□シャンプーと侵入者
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入院を粘るドラコがポンフリーさんに叩き出されて、授業に出てくるそうだ。ポンフリーさんが「もうほとんど治っているのに、まだ痛いなんて言うのよ!」と保険医さんとしてのプライドをつつかれ、晩メシの時に愚痴を零した。
「これ以上、健康な人にベッドを占領させられないわ!」
「そうっすね…ポンフリーさんの腕はすごいっすよ」
お疲れ様の意味も込めて、ポンフリーさんのゴブレットに葡萄酒をお酌した。それをポンフリーさんは一気飲みした…相当ストレスが溜まっているみたいだ。
シリウスに餌を持って行くために俺がそろそろと立ち上がると、もはや目が据わっているポンフリーさんに絡まれた。
「あら?もう行くの?」
「え〜っと…はい、ドラコが退院した時は内緒で乾杯しましょうか」
「…それもそうね」
あははは〜なんて愛想笑いを浮かべながら、俺は大広間を後にした。今日はセブルスがいなくて良かった…いたら問い詰められていただろう。セブルスに迷子の犬の話したら、犬をホグワーツから追い出しそうだから、なるべく秘密にしておきたい。
「あの薬も大詰めの段階だしな」
人狼薬はものすごく作るのが難しい薬で、今のセブルスは鍋の前から離れられないらしい。嫌いだと言っておきながら、ルーピン先生の為に薬を煎じているなんて…セブルスは優しいな
『待っていた……なんだ、そのニヤニヤした顔は』
セブルスを思い浮かべながら歩いていたら、いつの間にか森に着いていたみたい。先に来ていたシリウスに怪訝な顔をされてしまった。今日は頭が三つあるワンコもいた。
『ふん…どうせ、セブルスとやらの事を考えていたのだろう』
「あれ?2人とも知り合いだったっけ?てか、ワンコに関しては俺の思考まで読みやがって…当たりだよ!」
『お互いにツカサの匂いを感じてな…さっき知り合った。それより、その“セブルス”ってのは…セブルス・スネイプのことか?』
「おっ!セブルスのこと知ってるのか?」
シリウスの質問ににっこりと応えたら、シリウスは苦虫を潰したような顔をした。犬ってそんな表情もできるんだな…
「…セブルスは良い奴だぜ?少し誤解されやすいけど」
『ケッ…あんな奴のどこが』
「…………」
俺は無言でシリウスの頭にデコピンを喰らわせた。シリウスが犬らしくキャンッと吠えたけどスルーだ。今の俺は怒っています。
「ちゃんとセブルスのことちゃんと知りもしないで、決めつけるなよ」
『知ってるさ!』
「へぇ…じゃあ、セブルスの好きな食べ物はなんだよ?」
『それは…』
シリウスがさっきまでの勢いがなくななって、口ごもった。たぶん前の飼い主からセブルスの悪口を聞いていたのかもしれないな。俺はシリウスの目を見てハッキリ言った。
「あいつは勘違いされやすいだけで、芯は良い奴だから。本当にそいつのことを知らないで、悪口言われるのは辛いことだと思う。お前にだってそういう経験ないか?」
何か心当たりがあるのか、シリウスは押し黙ってしまった。言い過ぎたかと思ってワンコにアイコンタクトしたら、ワンコは『ツカサの言うことはもっともだ』と納得してくれた。
『……悪かったな』
「分かればよろしい!」
『ところでツカサ、前に見た子どもの1人がヒッポグリフに乗ってこのあたりを飛んでいたぞ』
「あ、ハリーな。魔法生物学の授業でちょっと乗らされてた」
賢者の石を取りに行く時に会ったぐらいの人間をワンコはよく覚えているなー…なんて思っていたら、シリウスが驚いた顔していた。