*最遊記*
□寺院と女
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「「「「じゃーんーけーん」」」」
岩肌の山に男女の声が響いた。どうやら、その声の持ち主たちはジャンケンで荷物持ちを決めているようだ。
「ポンッ」
「また負けた!!」
皆がグーを出す中、1人だけチョキを出した悟空が頭を抱えて大袈裟に嘆いた。
「これで8連敗だな」
柚依は無表情にそう言い、容赦なく荷物を悟空に渡した。
「どこまで歩くんだよッ!」
「こんな岩場じゃジープ通れませんからねェ…」
八戒は頭上を舞う白竜を見ながら悟空の質問に答えた。悟空は白竜の尻尾を掴んで怒った。
「お前さぁ―――っ!ジープ以外には変身できねーのかよ白竜!!」
「先生ー!動物が動物虐待してまーす」
「悟浄、馬鹿な事を言う前に足を動かせ。私はこんな所で野宿など嫌だぞ」
柚依は岩に足をかけながら、悟浄を冷ややかな目差しで見た。今まで黙って先頭を歩いていた三蔵が口を開いた。
「だが、このままだと山越える前に日が暮れちまうな」
「一晩の宿をお借りしますか」
岩山に現れた豪華な寺を目の前に八戒が笑顔で言った。
「げ、ごたいそーな寺だなオイ」
三蔵一行が目の前まで行くと、遠目からでも立派な寺院はさらに大きく立派に感じられた。
「すみませーん」
八戒の呼び出しに見張り台から1人の坊主が出てきた。
「何か用か?」
「我々は旅の者ですが、今夜だけでもこちらに泊めて頂けませんか?」
「フン、ここは神聖なる寺院である故、素性の知れぬ者を招き入れる訳にはいかん!」
坊主の不親切極まりない態度に悟浄は中指を返した。そして三蔵が隣にいると分かっているのに言った。
「これだから俺は坊主ってヤツが嫌いなんだよ!」
「へー…初耳」
「困りましたねェ」
「なんとかならないのか、三蔵」
柚依がチラリと横目で坊主を見ながら、『三蔵』を強調して言うと坊主がたじろいだ。
「三蔵だと?!……まさか“玄奘三蔵法師”…!?」
「しっ…失礼致しました!今すぐお通ししますッ!」
すぐに頑丈そうな門が開き、三蔵一行を招き入れた。