アズカバンの囚人
□夏休み…壱
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こんにちは、ツカサです。
今年もセブルスの家で夏休みを過ごすことになりました。
「ツカサ、しばらく研究室に籠もる」
「わかった。あんまりやりすぎるなよ?」
「あぁ」
セブルスも俺も相変わらずです。
セブルスがあまりにもいつも通りだから、告白されたの夢だっけと思うこともしばしば…
「っても、いい加減にケリつけないとな…」
ため息を溢して、のんびり食器を洗っていたら、家の外から野良犬の遠吠えが聞こえた。去年の夏休みに仲良くなった野良犬が、この家に人が来るたびに遠吠えで教えてくれるようになったんだ。
俺はそそくさと洗い物を終わらせて、エプロンで手を拭いて玄関のドアを見つめた。
ピンポーン
「はーい」
チャイムを鳴らすって事は、この町の人じゃない。この町の人はチャイムよりもまずノック&声を掛けるからね。「ツカサちゃんいるー?お裾分け持ってきたわよー」みたいに…さすが田舎クォリティーって感じで、初めは驚いたなぁ…
俺はよそいきの看板娘モードに頭のスイッチを切り替えた。ドアを開けると、ツギハギだらけのローブを身にまとった優しそうな男の人が驚いた顔で立っていた。
「…失礼、ここはセブルス・スネイプさんの自宅ですか?」
「はい、そうですよ。(家の)主人に用でしたら…申し訳ないのですが、しばらく研究室から出てこないと思います」
「そうですか、困ったな…」
ドアとその人の隙間から外を盗み見ると、侵入者対策の罠は発動していなかったみたいだった。ちなみに俺とセブルスの共同で作った。俺のはホームア○ーンみたいに、罠に引っ掛かったら全身に接着剤がぶっかけられるというコミカルでお茶目な罠だ。対してセブルスのは落とし穴のくせにガッツリな罠で、落ちたら串刺しになるようになってたりする。
「良ければお茶でもいかかですか?セブルスはいつ研究室から出るか分からないですし」
「いいのかい?」
「えぇ、悪意のない人は歓迎です」
にっこり笑って招き入れると、また驚いた顔をしてその人は中に入った。俺はローブを預かって、ドアの近くに置いてあるコート掛けにそれを掛けた。トランクはその下に置いておいた。
「さ、こちらにどうぞ」
「あ、ありがとう……どうして、私に悪意が無いと判断したんだい?」
「チャイムを鳴らすまで無事でしたでしょう?敷地からここまで、悪意のある人は罠に掛かるよう仕掛けがあるんです」
「なるほど」
マグル式に紅茶を出して砂糖とミルクを用意したら、この人は砂糖を自分のテイーカップに大量に入れた。スプーンでかき混ぜてもカップの底でジャリジャリ聞こえるくらい、それはもう大量に入れた。
「あ、すまないね。いつもこれくらい甘くしてしまうんだ」
「いえ、私も甘党ですから気持ちはよく分かります」
「そうかい!君とは気が合いそうだね。僕はリーマス・ルーピン」
「ツカサ・カミヤマです。どうぞ、よろしく」
「おや?籍はまだ入れてなかったのかい?」
「何のことでしょう…?」
ルーピンさんとお互いに首を傾げたら、セブルスがいつもより早く上がってきた。たぶん研究が煮詰まったんだろう。
「あら、セブルス」
「やぁ、お邪魔しているよ」
にこやかに片手をあげて挨拶をするルーピンさんにセブルスは吃驚仰天した。それからいつも以上に眉間にしわを寄せてルーピンさんを睨みつけた。
「何故貴様がここにいる?!」
「ちょっと君に用事があってね。それよりセブルス、知らなかったよ。君にこんな可愛い奥さんがいるなんて」
「「奥さん?」」
「あれ、違ったかい?てっきりそうなのかと…」
セブルスは色々疲れたのか、いつもご飯を食べている定位置の席に座った。
「…ツカサ、またあのモードになったな」
「あら?セブルスのお客さまに失礼がないよう、おもてなしをしただけよ?」
「それが誤解を生むのだ。いつもの口調に戻れ。それからルーピン、こいつは男だ」
「えっ?全然そうは見えないね」
「通常運転に切り替えまーす!…今までのは外面用の看板娘モードだったからな」
「それが素なんだね。せっかくセブルスにも春が来たと思ったのに残念」
「…用件を言え」
セブルスが睨んで言うと、ルーピンさんはカップを置いて真剣な顔でセブルスを見た。