アズカバンの囚人
□夏休み…弐
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セブルスへ
今日は出掛けます。
お昼はサンドイッチが冷蔵庫にあるから食べてね!夜ごはんまでには帰れると思う。
ツカサより
「これでよし!」
相変わらず研究室に引きこもってる根暗陰険魔法薬学教授にメモを残してみた。
「分からないことは人に聞けって言ったのセブルスだからな」
どうせ聞かれていない言い訳をメモにぶつけて、俺は"歌"でアズカバンに飛んだ。
ドンッガラガラ…ガシャン!
「痛ッ…ケツ割れる…って、ケツは元々割れてるっての!」
「誰だ?!どこから入ってきた!」
一人ノリツッコミをした後に、牢の隅で警戒してる人を見つけた。そこで俺はアズカバンに着いたと自覚した。俺はとっさに看板娘モードに頭を切り替えた。
「大変失礼いたしました。私、ホグワーツ魔法学校のお手伝いをやらせていただいております。ツカサ・カミヤマと申します」
「ホグワーツだと…?」
「はい…と言いましても、今回は私の独断で参りました。失礼を承知で伺いますが、シリウス・ブラック様でお間違えないですか?」
「…あ、あぁ」
反応してくれて少し安心した。
俺は安心させるように、にっこり笑ったけど、まだ警戒されてる…そりゃそうか。
「アズカバンは誰も入れないような場所だぞ?どうやって入った?目的はなんだ?」
「そんなに警戒しないでださい。私は他の人とは違う魔法を使うので、普通の魔法対策しかしていないアズカバンにも侵入できたのです。ここにきた理由は…シリウス・ブラック様が本当にハリー・ポッター様のご両親を裏切り、マグル大量虐殺をしたのか疑問でして…直接聞きにきました」
「私はジェームズやリリーを裏切ったりはしない!!」
「そうですか。では、少し失礼しますね…"今の言葉は嘘か真か示せ"」
俺がそう言うと、ブラックさんの後ろからピンポーンとクイズ番組で正解した時のような丸い看板が軽快なメロディーと一緒に現れて消えた。
「なんだ?!」
「あ、本当に無実なんですね…今のは私の魔法とでも言えばいいですかね」
「こんなふざけた奴が…」
ブラックさんは俺を睨み付けてきた。しばらく張り詰めた空気が漂う。
「今ので私の無実を信じたというのか…?」
「いえね、いきなり知らない他人の話を信じることはできませんが…私は私の"力"を信じていますから」
へにゃっと緩く微笑むと、ブラックさんは呆気にとらわれた顔をした。
「…私を信じてくれるのか?」
「あくまで自分の"力"を信じているだけですよ」
人差し指を唇にあてて微笑むと、ブラックさんは嬉しいような険しいような難しい顔をした。すると、突然寒気がしてきた。あたりの気温がいきなり低くなって、吐息が白くなった。
嫌な気配がする檻の向こう側をゆっくり見ると、真っ黒で不気味なフードを深く被った何かがこちらを見ていた。
「…で、で、でたぁぁああ!!」
なんか檻の向こうから、フワフワ浮いたローブから手を伸ばしてくるー!!お化け無理!無理!無理!
「ホラーは苦手なんだよぉ!こっち来るなバカぁ!!」
俺は看板娘モードが頭から吹っ飛んで、半泣きで思わずブラックさんに抱きついてしまった。