アズカバンの囚人
□夏休み…四
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「オヤッサン、癌なんだってな」
「…ばれちまったか」
病室に戻ると、オヤッサンが目を覚ましていた。セブルスは気を利かせて、部屋に居なかった。
「なんで黙ってたんだよ!大人しく入院しろよ!」
「ばかやろう。親(俺)が家で子ども(お前)を出迎えなくてどうするんだよ」
今まで気付かなかったけど、パジャマに着替えたオヤッサンの身体は痩せこけていた。
「俺はもう長くない。だから校長に手紙を出してお前を帰してもらった。間に合って良かった」
「…ッそんなこと言うなよ!俺はまだアンタに恩返ししてないんだよ!」
「ツカサ…」
オヤッサンの目は真剣で、俺は延命の歌(呪い)がなかったか頭の中で探していた。
「妙なこと考えんじゃねえぞ」
オヤッサンの厳めしい声が俺の思考を中断させた。
「でも…ッ」
「セブルスの話を聞いた。お前の力も成長してるそうだな」
「そうだよ!だから…
「思い上がるな!いくらこの町に結界が張れるぐらいになろうと、命に関わるなんざ身の丈を知れ」
「お前は神さまじゃねえんだよ」
オヤッサンの言葉が胸を抉った。頭の中がぐちゃぐちゃして、ただ拳を硬く握るしかなかった。
オヤッサンの鋭い眼差しから逃れるように俺はドアを乱暴に開けて、オヤッサンから逃げた。