アズカバンの囚人
□マカロンと紅茶と
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「──…それで、フォークスにそんなこと言われて、まいったよ」
「気絶していたツカサの自業自得ですな」
「うっ…言い返せない」
新しく授業も始まり、お昼休みに入ると廊下では生徒が楽しそうにお喋りしていたりする。俺はそんな生徒たちを微笑ましく眺めながら、セブルスとお昼を食べるために廊下を歩いていた。
「ツカサ!!」
中庭から名前を呼ばれた気がした。振り向くと、ハリー、ロン、ハーマイオニーがこっちに来た。ロンとハーマイオニーは喧嘩しているみたいだし、ハーマイオニーの足下にはシャン姐さんがいた。え?俺、何かやらかした?
「スネイプ先生こんにちは。少しMr.カミヤマをお借りしても宜しいですか?」
ハーマイオニーが怒った顔のまま口調だけ丁寧にセブルスに言った。セブルスはチラリと俺を見て、無言で歩いていった。ごめん、セブルス…あとで一緒に食べよう。
「で、どうした?シャン姐さんも昨日ぶり」
「シャン姐さん…?それってクルックシャンクスのこと?」
「そうだよー。日本人には発音がしづらくて、俺はそう呼ばせてもらってる」
シャン姐さんが俺の乗りたそうだったから屈むと、肩に身軽な動きで乗ってきた。落とさないように気を付けながら立ち上がると、「そんなに変わらないわね」って言われた。嘘だろ…
それで「昨日は愉しかったわ」なんて言うもんだから、本当に姐さんっぽかった。
「いつの間に仲良くなったの?」
「昨日の夜にシャン姐さんが散歩してるところにバッタリ出会ってさ」
「だから昨日いなかったのね!」
「今はその話じゃないだろ!僕のスキャーバスのことだよ!!」
ハーマイオニーの雰囲気がふわりと柔らかくなったのに、ロンの一言でまたピリピリしだした。
「ツカサ!動物と話せるんでしょ?僕のスキャーバスの具合が悪くなった理由を聞いてよ!」
「そうよ!私の猫が原因じゃないってことをハッキリさせてちょうだい!」
「ごめんね、ツカサ。最近スキャーバスが何かに怯えているみたいなんだ。ロンはクルックシャンクスのせいだって言ってるけど…」
「賢いクルックシャンクスがネズミを追いかけるなんてするわけないでしょ!」
ロンとハーマイオニーに挟まれたハリーが疲れたように笑って、小さく肩をすくめた。俺は目だけでハリーを労って、シャン姐さんを優しく下ろした。
「スキャーバス借りてもいいか?」
「うん、いいよ。優しくね」
俺はロンからスキャーバスを借りて、両手に乗せた。それで顔の高さまで上げて声をかけた。
「よう、君は最近元気ないらしいな?どうしたの?」
『…わ、私の言葉が分かるんですか?』
「まぁ、一応魅姫らしいからな」
『あなたは魅姫様なのですか!?』
「うん、だから動物(お前たち)の言葉も分かるよ。何があったか教えてくれるか?」
スキャーバスは自分を落ち着かせるために、両手で顔を擦った。それからおどおどしながら、その小さな口を開いた。