アズカバンの囚人

□嘴と鉤爪
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翌朝。



「神様、仏様、今日が何もなく終わりますように」

「…新しい食前の祈りですかな?」



大広間でみんなが朝メシを食べている中で、俺は両手を擦り合わせて祈った。それを隣でセブルスが訝しんで見ていた。



「今日…ハグリッドの授業なんだ」

「なるほど。それでかね」



それだけで納得されるほど、ハグリッドの授業は不安要素がいっぱいなんだな。セブルスはニヤリと笑って、机にうなだれている俺を見た。



「傷に効く薬を多めに用意しておきますかな?」

「おう、皮肉抜きで用意しといてくれ。無傷で帰れる自信がないわ」



机の上でごろごろさせていたら、セブルスに無言でチョップされた。え?なに?イジメ?


そんな感じで、朝メシの時間は終わった。俺はチキンと水筒といらなくなった皿を持って、森のバジリスクの墓に行った。到着すると、そこにはすでに昨日の黒い犬が尻尾を振って待っていた。



「おはよう」

『あぁ、おはよう』

「今日はチキンと水」  

『チキン!!』



黒い犬は俺がお皿にチキンを置くまで“待て”をしていたけど、すぐにチキンに飛びついた。俺はもう一枚の皿に水筒の中身を出した。



「喉に詰まらすなよー」

『うまい!』

「そうか、チキンが好き?」

『大好物だ!!』



俺はその隣に座って、黒い犬がチキンを食べたり、喉に詰まらせて焦って水を飲んだりしているのを眺めた。



『なんだか、顔色が悪くないか?』

「あー…次の授業が不安でな…」

『そうか、あまり根を詰めるなよ』



黒い犬に頬をべろんと舐められた。…これは慰めてくれてるのか?頬に食べ屑がついた気がするんだけど。



「ありがとう…そういえば、名前が無いと呼びづらいからさ、名前教えろよ」

『…………好きに呼べばいい』

「…分かった分かった。よっぽど変な名前を元ご主人サマにつけられたんだな?いいよ、無理に聞かないから」

『…すまないな』



それから俺は空になった皿を片付けて、黒い犬と別れた。そして、恐れていた授業の時間になった…


城からぞろぞろと紅と緑がこっちに向かってきた。今日はグリフィンドールとスリザリンの合同授業なんだと気づいた時の俺の顔はかなり悲惨だったと思う。先に着いた生徒が俺の顔を見て、サッと目をそらすんだもん。代わりにハグリッドは目をキラキラさせて、期待に満ちた様子だった。



「今日はみんなにいいものがいるぞ!さあ、ついてこい!」

「移動するからなー!森の隣を歩くから、はぐれないように気をつけろよ!」



ハグリッドが意気揚々と歩きだして、森の隣を歩くからか生徒は少し不安そうについて行った。五分後には昨日俺が連れてかれた放牧場のようなところに着いた。



「みんなこの柵に集まれ!」



なんだかんだで、ちゃんと号令とか出せてるじゃん。少し安心した。



「さーて、イッチ番先にやるこたぁ、教科書を開くこった」

「どうやって?」



ドラコが冷たく、気取った声で言った。その手には紐でぐるぐる巻きにされた大きな本があった。…ハグリッドは開くこともままならない本を教科書にしたのか?
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