秘密の部屋
□夏休み
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「ふんふーん♪」
爽やかな夏の朝日が差し込むキッチンで、俺は鼻歌まじりでオムレツを焼いていた。
「………ずいぶん早いな」
「あ、おはよう」
振り向くと、まだ寝癖がついてるセブルスが眠たそうに突っ立っていた。夏休みに入ってから、俺はセブルスの家で居候することになった。そのおかげで、休日のセブルスは朝が弱いことを知った。仕事のある日はビシッと起きられるらしい。…俺とは逆だな。
「もうすぐメシできるから、座って待ってて」
「あぁ…」
セブルスはゾンビのような鈍い動きでいつもの椅子に座った。四人用のテーブルの右奥がセブルスの席だ。俺はその席に毎朝郵便受けから取った日刊預言者新聞を置いておく。
我ながらなんてサービスのいい奴なんだろうと、セブルスが何も言わないから自画自賛しとこう。当の本人はバサッと新聞を開いて、つまらなそうに新聞を読んでいる。
「へい、おまち」
まだ少しボーッとしているセブルスの前に皿を置いて、俺も向かい側の椅子に座った。今日のメニューはキツネ色のトーストと、ふわふわのオムレツと、カリカリのベーコンと新鮮なサラダに紅茶だ。
「いただきます」
「……」
食事中は割と静かだ。たぶん男は女子みたいに、喋りながら食べるなんて器用なマネができないからだと思うけど。
朝ごはんを食い終わった俺は皿洗いを始める。セブルスは洗面所に行って、やっといつもの憎たらしいセブルスになる。
「ツカサ…」
「ん?なに?」
洗面所から戻ってきたセブルスはキッチンに立っている俺をマジマジと見て言った。
「まるで主婦だな」
「うるせぇよ。セブルスが何も出来ないから、仕方なく俺がやってんだろうが」
言うだけ言うと、セブルスは俺を無視してまたリビングの席に座り、また新聞を読み始めた。俺は文句を言うのを諦めて、ティーカップの茶渋の汚れを取ることに専念した。
「こっちって写真が動くんだよな」
俺は皿を洗い終わって濡れた手をエプロンで拭きながら、セブルスの背中越しに写真を覗きこんだ。
「マグルの写真は動かないのかね?」
「動いたら世界がパニックよ?」
俺もセブルスの向かい側に座って、のんびりした。エプロンは背もたれにかけて、これで朝の一仕事が終わった。
「そういや、今日どうする?また部屋に引きこもるのか?」
「いや、今日は足りなくなってきた薬草を買いに行くつもりだ」
「ふーん…あ、何時ぐらいに帰ってくる?昼はいる?」
「帰りは夕方ぐらいになる」