*魔人探偵脳噛ネウロ*
□征服
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大学の講義が終わり、淳がルーズリーフなどを片付けていると、男友達の一人がニヤニヤした顔で近づいてきた。
「淳くーん!」
「…なに、そのテンション。きもいから近寄らないで」
「ひどいなー!スペシャル情報を教えないぞ!」
普段からテンション高めの友達だが、明らかな高テンションに淳は眉をひそめた。
「これから○○女子大の女の子たちと合コンやるんだけど、一緒に行く?」
「…○○女子大?」
「そう!あの可愛い子が多い○○女子大!そこで可愛い彼女作って、淳のシスコンを少しでも緩和させようと…」
「誰がシスコンだ」
淳が一発軽く殴ろうと構えたが、携帯電話の着メロがそれを邪魔した。
「ったく、運のいい奴め」
携帯の画面を見ると、ネウロからのメールが来ていた。
《not title
『謎』は呼んでいる。すぐに来い》
相変わらずアドレスを教えていないはずなのにネウロから呼び出しのメールが来ると、淳は携帯を待受に戻しながら溜め息をついた。
「ごめん、用事できたから…またね」
「えー…淳狙いの女の子になんて謝ればいいんだよ!このシスコン!」
「シスコンじゃないよ。そういう時の"お口"はよく動くでしょ?頼んだよ」
「出た!淳の流し目!その色気で何人の男女を落としたんだ?」
淳は自分に多少の色気があるのは自覚していた。さらにその色気が異性と同じくらい、あるいはそれ以上…同性に効くことも知っていた。そして、今回も同じように「頼りになる友人がいて助かってる」と微笑むと、友達は満更でもない表情で淳を見送った。自分の持っているものは使わないとねと思いつつ、淳は大学を出た。
■□■□■□■□■
淳が呼ばれた場所は何故かうどん屋の前だった。うどん屋の前で騒いでいる二人組の仲間だと思われたくない気持ち半分と、弥子を守る義務感が淳の心の中で争った。結局、義務感が勝り、淳は弥子とネウロに近づいた。
「あ、お兄ちゃん…」
「遅い」
店の前で漫才のような掛け合いをしている二人に周りからの視線が強くなってきているのを感じた。淳はものすごく他人のフリがしたいと遠い目で思った。
「…で、今日は何の用?」
淳が呆れたようにネウロに尋ねると、ネウロは満足そうに両手を広げて教えてきた。
「うむ、貴様の足がイモ虫並のスピードだったのでヤコと話していた。事務所を開こうと!」
「事務所…?」
淳がチラッと弥子を見ると、首を横に振って否定している。弥子じゃネウロの行動を止められないか…と肩を落とした。
「はぁ…」
淳は手で額を覆い、諦めたようにため息をついた。