*魔人探偵脳噛ネウロ*

□微酔
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《今夜、空いてる?》



ヒステリアの事件から数日後。
いつも通りに過ごしているが、淳と弥子の間には少しわだかまりが残っていた。そんな中、淳に笹塚から一本の電話がかかってきた。



「また事情聴取ですか?ヒステリアの件はすべてお話しましたけど…?」

《いや、飲みに行かない?》

「え…?」



まさか夜に電話が来るなんて思わなかったし、さらにその内容が一緒にお酒を飲みに行くというものだったから淳は驚いた。淳は慌ただしく用意し、笹塚との待ち合わせの場所に急いだ。



「呼び出しちゃってゴメンね。急に時間が空いたから、誕生日のお祝いしようと思って」

「いえ、嬉しいです」

「じゃあ、行こうか」



淳は嬉しい気持ちのまま微笑むと、笹塚に頭を撫でられた。笹塚は歩き出し、淳はその背中を追った。



「…いい雰囲気ですね」

「そうでしょ」



笹塚が案内した店は渋いBarだった。店内の照明は少し暗く、落ち着いた雰囲気だった。



「こっちにおいで」

「はい」



淳が初めてのBarを眺めていたら、先に入った笹塚に手招きされた。そっとカウンターに二人で並んで座ると、なんだか大人の仲間入りができた感じがすると淳はくすぐったい気持ちになった。



「何か飲みたいお酒ある?」

「うーん、まだお酒の種類がよく分からなくて…」

「そっか、そうだよね…炭酸は平気?」

「大丈夫です」

「マスター、ビーチツリーフィズ
とジン」



スマートに注文をする笹塚の様子に大人の男って感じですごく格好良いと淳が見つめていると、その視線に気づいた笹塚が「あんまり見ないで」と片手で優しく淳の目を覆った。笹塚の手はすぐに外されたが、淳は自分の鼓動が早くなったのを感じた。



「親御さんにはちゃんと言ってきた?」

「夜間バイトの子が出られなくなったから、代わりに行ってくる…って言ってあります」

「俺と飲むことは言ってないんだ?」

「弥子にずるいって言われそうですし…なんだか俺と笹塚さんとだけの秘密にしたくて」



目の前にお酒が置かれた。笹塚のはジンのロックで、淳のは少しピンクかかった透明な酒だった。



「それじゃ、お誕生日おめでとう」

「ありがとうございます」



グラスをコツンと軽く当て、乾杯した。初めて飲んだ酒は桃の風味が口の中で広がり、舌触りが良かった。



「ジュースみたいですね」

「甘いの苦手だった?」

「いえ…好き、です」



グラスについた水滴をそっと指先で拭いながら微笑みかけられ、笹塚は自分が好きだと言われているような錯覚に陥りそうになった。
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