賢者の石

□Hallowe'en
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爽やかな朝。

いつもと同じように、セブルスに宙吊りにされて起こされたけど、今日は何故かセブルスがげんなりした顔だった。それに部屋がほのかな甘い香りに包まれていた。



「今日、何かあったっけ?」

「ハロウィンだ」

「あぁ…コスプレと恐喝とお菓子食べ放題の日か」

「………」



あれ?いつもだったら、ここでセブルスのツッコミが入るのに、今日はキレが悪い。顔を覗き込むと、いつも以上に顔色が悪かった。



「大丈夫か?」

「…問題無い」

「そうは見えないから言ってんだよ」

「我輩のことを気にかけるより、その格好をどうにかしたらどうだね?」

「しょーがないな」



まったく、セブルスは意地っ張りだな。とりあえず俺は着替えて洗面台に向かった。顔を洗って、髪を整えようとしたら、ブラシが見当たらない。



「セブルス、ブラシ知らない?」

「こっちだ」



ベッドルームに戻ると、何故かセブルスが俺のブラシを持ってソファの肘掛に軽く座っていた。その肘掛に俺が腰を掛けると、かかとが浮くのに、セブルスは余裕で地面に着いているばかりか、膝さえゆるく曲がっている。…羨ましいなんて絶対思わないからな!



「どうしたのだね?さっさと座りたまえ」

「お、おぉ…なんで、そのブラシをセブルスが持ってんだよ?」



セブルスがすっと立ち上がって、俺をソファに座らせた。それから俺の背後に立ち、俺の髪にブラッシングを始めた。



「この前の二の舞は困りますのでな」

「ふーん…ま、いっか」



ブラシと一緒に筋張った細い指が優しく髪を解いていくのが気持ち良かったから、好きなようにさせることにした。



「今日も上で纏めるのか?」

「んー?特に考えてなかった」

「そうか…ゴムを貸したまえ」



セブルスの言われた通りに手首につけていたゴムを後ろにいるセブルスに渡した。セブルスはそれを受け取ると、慣れない手つきで髪を纏めた。お互いに無言だったけど、思いの他その空間が居心地良かった。
いつもと同じポニーテールだけど、人にやってもらうのもいいな。セブルスの手、気持ちよかったし。



「終わったぞ」

「ん、さんきゅ」



準備が終わったから、いざ大広間に行こうとドアを開けた。開けた瞬間に甘い香りが押し寄せてきて、かなり驚いた。
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