お正月。戦国の殺伐とした雰囲気はどこへやら。僕はのんびり袴姿で小太郎さんと羽子板を楽しんでいた。



「やっぱり小太郎さん上手いですね!本当に初めてですか?」

「…………(初めてだ)」



羽根つきの乾いた音が続く中、コマ対決をしていた幸村さんと佐助さんがやってきた。



「おー、やってるでござるな!」

「コマ対決はどうでした?」

「佐助が途中からコマに乗って遊びだしたので、勝敗は…」



僕の顔を見た幸村さんは言葉が途切れた。そして、吹き出しそうになるのを必死に堪え始めた。



「その顔…風魔にやられたんだ?」

「兄さん、笑いすぎです」



笑いを堪えている幸村さんの隣で佐助さんは僕を指差して笑った。負け続けている僕の顔は罰ゲームで、落書きをされていたからだ。



「笑いすぎですよ。どんな顔になってます?」

「犬…すごく似合ってるよ」

「風魔殿は落書きがひとつも無いでござるな」

「伝説に勝とうなんて無理なんだよ」

「次こそは勝ちます!」



佐助さんの言葉にカチンときた僕は羽子板を握り直し、小太郎さんが持つ羽根を睨んだ。小太郎さんの打った羽根は予想より高く、僕は頭上に伸ばした羽子板に気を取られ足元がお留守になっていた。袴に足を引っかけ、後ろに倒れそうになった。倒れると思った瞬間、僕の身体は黒い腕の中にいた。羽根は伸ばした羽子板にカンと軽い音を立てて、小太郎さんの陣地に落ちた。



「勝った…?」

「まぐれ勝ちだね」

「まぐれでも勝ちは勝ちですよ!」



僕は嬉しい気持ちを押さえきれずに筆を取った。そして小太郎さんの頬に筆を滑らすと、ずっと書きたかったものを書いた。



「幸村さんと佐助さん、小太郎さんには内緒ですからね」

「あらら〜」

「…破廉恥でござる」

「………(何て書いた?)」

「内緒です」





僕は小太郎さんの頬に小さく「好き」と書いちゃいました。皆さんも、小太郎さんには内緒ですからね?


小太郎は筆の流れから自分の頬に書かれた言葉に気づいていたが、恥ずかしげに秘密にする恋人の可愛さに口を閉じていた。



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ