土榎r-novel

□痛快の休日
1ページ/2ページ

今、土方は己の目の前で繰り広げられる現実を直視出来ないでいた。
自分は白昼夢でも見ているのだろうか。
はたまた、天変地異でも起きている光景か。
思わず固唾を飲んで、ただ目の前の光景を見守る事しか出来ないのだ



「真面目に仕事してる…?」


呟く土方の前には、私宅の机に猛然と向かう榎本が居る。
書状に向けて愛用の万年筆を無我夢中で走らせ続ける姿を気付けばかれこれ既に二時間は見ているだろう。
それでも、余りにも眼を疑いたくなる光景に見飽きる事など無かった。
その支配下に居る自分が言う事じゃ無いし、失礼極まり無い事だとも思う。
しかし、そう思わずに居られようか


休暇だからと呼ばれた自分なのだが。
今朝、出向き顔を見た途端

『ごめん。今になって急な証書が来てさ、時間が掛かりそうなんだよね』

と屋敷から追い出された。
だが、今日の日は榎本の職権で土方まで非番にされてしまったのが事の発端。
恋人と何気無い平日を過ごすのを拒否する者は居ない。
少し溜まっていた雑務は、休暇の前後に多少の寝不足さえ伴えば終われる。
そんな時、榎本は何故か土方の自室へ入り浸り、今日の日を期待の眼差しで待ちわびていた様子だった。
だから土方は頑張ったのだ

そうまでして時間を作ったのに、追い帰されては堪らない。
不機嫌になりつつ、待つと言って屋敷に上がった。


そこで話しは戻るが。
普段は松平の働きが目立つばかりに榎本がこうも軍務に追われている姿は新鮮で、
何かと土方の雑務中に隣に来ては構ってくれと畝がんだり、普段は鬱陶し程に近付いてくる己の事を、今となっては完全無視だ。
土方は余りの出来事に未だペンを走らせ続ける榎本を見ているに過ぎないが。
普段の自分達の立場と光景が、そっくりそのまま入れ替わっているような気分に陥っていた。

本当に急ぎの証書らしく榎本は一向に手元から眼を離す気配は無い。
屋敷へ入ってから『良いように寛いで』と言われた以上、言葉も発していない。
本棚が壁に敷き詰められた洋間の奥。窓際へ背を向けるように置かれた机の上には洋書や地球儀が並ぶ。
正面に位置するソファーに腰掛けている土方だが、
そこで彼は、この見事に集中している榎本の背後へ音も無く近寄り、手元を覗くようにして榎本の撫で肩へ己の首を乗せた。
そこから指先で頬を小突くが、案の定、反応は無い。
真顔で手元を見詰め続ける榎本を見て、土方は僅かに口元を歪め。
更に釦の外れる襟元から首筋、鎖骨を準えるようにして撫で上げてゆく。
まるで行為を促す様にシナる指先。もう、愛撫と言って良いだろう。
土方は厭きたらず榎本の耳朶を甘噛みした。
しかし、それでも榎本は無反応だった。
いつもなら過剰な程に土方へ反応を示す榎本の身体。それがビクともしないとなれば、凄まじい集中力だ。

さすがはペン一つで多大な外国情景をものの数年間で頭へ叩き込んで来た榎本の明解な頭脳。
そう感心しつつ。邪魔をするつもりは無いが、
こうなれば何処まで無視出来るだろうか、些細な土方の悪戯心に火が灯った。


撫でていた指先でパリパリの白いカッターシャツの釦を全て解き、前を肌蹴させる。
そして両袖の付いた足元を隠す机の下へ、椅子の脇から潜り込んだ。
大きい机下は多少の圧迫感はあるが、身動きは十分に出来る。
足元に土方が潜り込んだ事とを未だに気付いていないだろう榎本の表情は真剣そのもの。
それを盗み見ながら椅子に座る脚の前へ来ると、腰へ手を伸ばし。
洋帯をカチャカチャと緩め、大胆にも下着までを乱れさせる

勿論、半分は悪戯気分だ。
ただし、そのもう半分の感情は58%が呼び出しておきながら構うどころか放置プレイな榎本への抗議。
若干、2%程は総裁を労る気持ちである。
だから過剰な行為は慎まなければと思いながらも早々と土方の手は進み、下着からまだ柔らかい性器を取り出す。
そこから少し上を見上げると、榎本は無表情で書状へ万年筆を滑らせているのが見える。
まだ気付かない。
そう納得すると、股の間に身体を潜らせ取り出した榎本の自身を、口へパクりと運んだ。


「ッ…!なにっ、ひィ…ちょっ、そこで何してんの!?」

そこで漸く身の危険を関知した榎本が声を張り上げて机下を覗く。
すると、さっきまでソファーに居て待つと言っていた筈の土方の顔があり。何とも希少な満面の笑みを浮かべているのだ。

「喉が乾いた」

「お茶なら向こうだけど…」

「アンタが勝手に寛いで良いっつったから、自分で飲み物の調達…」

「そこで何を飲む気かな!?」

「そんなの一つしかねぇだろ。アンタの―…」

「あぁああ!言わないでっ!聞きたく無い!!」

「俺に構ってねぇで続けてろ。急ぎなんだろ?」

「出来るかァアア!!!!それ理解してんだから離し…―ぁアアっ!」

榎本の口から嬉声が出る。
制止はどこ吹く風か、土方は無情にも口淫を再開した

綴じようとする脚は座り込む土方の身体に邪魔され、大きく開かされたまま。
頭を何とか引き剥がそうと黒々とした髪を掴むが離れる気配は一向に無い

「うぁ、や…っ止め…」

「止めねぇ。諦めて仕事してろ。早く書かねぇと松平が取りに来るぞ―」

本当に土方に構う暇は榎本に残されていない。
悔しくも土方の言う通り、松平が来る手筈になっているのだ。
平然と語尾を伸ばし忠告する土方が憎らしい。

榎本は下腹部から無理矢理に意識を離れさせ、万年筆を握り締める手に力を込めるが、
一度、手放した集中力は戻らない。
目の前にある書状に羅列する字が脳裏に横切りつつ、覚醒した快楽に瞬く間に流されてゆく

「ヤだ、ッ…んァ…」

自棄気味に上げていた顔もとうとう机に伏してしまった。
息が乱れ、焼けるように熱い目尻には快感の証が滲み出す

「ソレ早く終わらせねぇのか?」

「分かってるっ…けど―…ひぃ、あァっっ!」

口では何とでも言いつつ、土方は先端部から溢れる蜜を指先で拭うと壺へ目掛けて、その指を押し込んだ。
ここ数日は土方の方が時間が無かった為に、その刺激は余りにも大きい

「はぅん…っく、ッ」

先走りにしては多い程の蜜が一気に溢れ出る。
それを上手く咥内で受け止めながら、キツく締め付ける密壺を解す指は、内壁を拡げ徐々に奥へと進む

「や、ソコ…ふぁ、ヤダ…ぁ、はっ」

「悦ィからヤなンだろ」

否定の意味合いでも、快感を取り払う為でもフリフリと首を振るう。
それを見て土方は、さも上機嫌に歪めた口で榎本自身の先端を吸い上げるように軽く口付けた

いつもは纏わり付く榎本を鬱陶しがる土方だが。
実際、己がそう成れば腹が立つと言う身勝手な思考。
文句の一つも言いたいが、咎める余裕は今の榎本に無い。たとえ、そんな余裕が残されていれば、まず先に万年筆を取っているだろう

密壺の心地良い圧迫感、
自身を包む熱い咥内、
粘膜質な舌に翻弄され背筋がブルッと震え上がった

「も…無理っ、…ンン」

「早くねぇ?」

「だって、時間な…」

もう高見は直ぐそこまで来ていた。
この状況では羞じらいなど構っていられ無い。土方の相手は後回しにして、このまま咥内に一刻でも早く果ててしまえば、取り敢えずは書状に取り掛かれる。
躊躇いがあるにしろ、土方の舌先から与えられる熱と痺れるような快感を少しでも多く貪ろうと榎本は下半身に集中していた

「早く出した…っン、くぅ―…そのまま、奥…ぅ」

腰をクイクイと小刻みに揺らし、甘えた声でおねだりする。

己が強制していないにも関わらず行為を望む事は滅多に無いのだが、当然ながら土方は腑に落ちない。
自身から唇を離し、入り口の付近で出し入れを繰り返していた指先を止めた。

「こんな時ばっか、しおらしくなっても無駄だゼ?」

「ひぃ、んっ…お願、続けて…」

「そう言われると焦らしたくなンだろうが」

赤く脹らんだ自身の根元を土方の指が締めチュと先端部にキスを落とす。
榎本は背筋を反らせた


「この鬼!非道っ…」

「今更だな。誰に言ってンだよ」

土方の口元がニヤリと弧を描いた瞬間─…
洋間の扉がノックされた。


事前に来ると聞いていた為に玄関は開けていた。
そして榎本が今洋間で作業をしていると知っているのは限られた者しか居ない。
机下に居る土方に熱くたぎる自身を握られたまま榎本は青褪め。冷水でも浴びたよう一気に感情も頭も冷えてしまった。
チラリと机下に入る土方を見ると、これまた嫌味な程の笑みを浮かべているのだ

「大丈夫だって。バレやしねぇーよ」

両袖ディスクの下に潜る土方が小声で囁く。
足元を隠す机下に囲まれている為、幸いにも気付かれはしないだろうが、
自身へ愛しそうに頬を寄せる様が問題だ。
土方が喋る度に掛かる息で腰が疼く。
妖しく歪む口元から僅かに赤い舌が顔を覗かせ、鋭い眼に見詰められれば興奮を煽った

「榎本総裁…いらっしゃいますか?」

「ぁ…開いて、るよ」

思わず押し黙っていた時に掛けられた声を無視する訳にもいかなく、
榎本が応えると静かに扉は開かれ松平と大鳥が入って来る。
まさか大鳥らが榎本の足元に土方が居るとも思わないだろう

「おはよ釜さん、すまないな急に」

榎本が居る机へ徐に近付く大鳥に、ヒュっと小さく息を飲んだ




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ