Serial-novel

□ボーイズトークA
1ページ/2ページ


「ふくそーさぁーい!」

「おや、陸で御一人とは珍しいな。松岡さん」

「それがよー、源悟が榎本さんに報告行ったきり戻って来なくてさ。探したけど庁舎の中に居ねぇんだよ」

「呑みに出掛けたか。仕方無いな、また私に無断で……松岡さん、至急土方さんに連絡を」

「え?土方さんにか?なにも新選組に探索させなくても街の呑み屋を探せば…」

「大鳥さんも急用が有ると出て行ったのでね。3人を指名手配し。即時、馴染みの店を調べるようにと」

「し、指名手配って!?」

「では私は先に出るので、宜しく頼んだよ」


言い残し、颯爽と背を向けた五稜郭の貴公子こと松平太郎。

彼の予測通り実は今宵、
報告に訪れた甲賀を連れ出した榎本に、大鳥も招集され。
第二回ボーイズトークが、厳かに開催されていた。
3人が無類の呑兵衛であり。今回の開催地は港に近い料理屋の個室。
指名手配された事など知る由も無く、榎本が気前良く奢ると甲賀を接待している

「と、言うわけで。どんどん呑もうか甲賀くん」

「それじゃ遠慮なく」

「釜さん、この時点で展開が予測出来ているのは、僕だけじゃないよな…?」

「あ、俺も。ま、榎本さんが奢るって言うし有り難く呑ませてもらいますが」

「私もさっきから予感はしてるよ。しかしそう何度も同じ過ちを犯すほど、私はバカじゃないね」

「知ってるって。ビールでいいよな?」

「うん、6本にして。で、余計な邪魔が入る前に!!さっさと甲賀くんに聞きたい事があるんだよ」

「どうぞ何なりと。そんな事だろうと思ってました。やべ、タバコ切れたし…。使い頼も」

「お、ビール来たぞーっ!そんじゃ取り敢えず乾杯」

「「かんぱーい」」

「って何でいま圭介が音頭しちゃったの!?私じゃないの!?奢りなのに」

「まぁ一応、一番年配だ。別にいいだろ」

「酒の味が変わるわけでも無いしね。それで、榎本さんの聞きたい事って?」

「あ、それはさー…、実は、取り扱い方ってのを知りたくて」

「取り扱い方?仕事の話し?俺なんかに榎本さんが教わるような事あります?」

「“松岡くんの”だろ?」

「磐吉の…?」

「うん、この中じゃ唯一、甲賀くんが相手に対して威圧的って言うか、有無を言わせてないって言うか…。優位に立ってるよね」

「それでココまで呼び出されたんですか俺が」

「だって実際そうなんだろ?」

「アイツ元から従順な奴なんで俺は余り苦労してないだけですよ。あぁ、タバコ来た。榎本さんチップ」

「え、そこも私なの?もーいーけどさ。ちゃんとアドバイスしてよ!君だけが頼りなんだからね!」

「五稜郭じゃ迂闊に聞けないもんなー。先日はホント殺されるかと思ったぞ」

「私なんてさー、次の日に出掛けたけど、馬に乗るの辛くて馬雪車にしたくらいだよ」

「事情は何となく分かったけど、アドバイスかぁ…。ん、この塩辛ンメェや」

「やっぱり、あの躾ってやつなのか?」

「いや、躾ってより。寧ろ調教ですね」

「ち、調教っ…?!」

「どちらが優位かを一度、明確にさせるんですよ。分からせると学習したみたいで。それ以来、アイツ無茶してこなくなったし」

「その、分からせるって事だよ!どーしたら分かってもらえたの!?」

「あれか、ムチでビシバシとか、ロウソクとか」

「さ、さ猿轡とか…縄で吊るしたり拘束したり目隠ししたり…とか、しちゃった?」

「言うこと聞かないと、お・あ・ず・けってな」

「いや、それ圭介がしても効果ある?もう酔ったの?」

「じゃあなにか、アレだ、あの根元を縛って塞き止めちゃったりするヤツか」

「…あー…アレさ、息まで止まるよね…」

「されたンかいっ!!経験アリかっっ!?釜さん僕達は親友だろー!独りで出世しまくってそんな大人になりやがって!置いてくなよチクショー!」

「出世は関係なくない!?つか私より大人に言われたくないんだけど。完璧もう酔ってるよね?いつのまにワインまで空けたのかな?」

「あーあ、ちゃんぽんすっから悪酔いしてますね」

「それで!実際はどうなの甲賀くん」

「そこまで大袈裟な事は、してませんよ」

「だ、だよねー。さすがにねー…」

「ただ、ちょっくら束縛して目隠しつけて、焦らしてやったくらいなもんで」

「君の“ちょっくら”って凄まじいな!」

「最初は今よりも更にウザかったんで、つい感情的になりました」

「甲賀くん!ソレ保護者は知ってるのかなっ!?荒井さんが聞いたら卒倒しちゃうよ?!」

「絶対、郁さんなら育て方を間違えたとか落ち込むし騒ぎ立てるぞ!!」

「俺の気性は生まれつきなもんでスミマセンね。つか、御二人は聞いてどーすんですか?試すの?」


「その、手足を縛ったり拘束して…?」

「猿轡を噛ませたりとか」

「服とか無理矢理はぎ取ったりなんかして…」

「散々いろんなとこ触ってやるとか」

「そうそう、上に跨がって。どっちが優位かを、知らしめるんですよ」

「えー…でも、土方くんが簡単に捕まってくれるとは思えないし」

「そうだなー、失敗した時のリスクも相当だぞ」

「そこは色でも薬でも駆使すりゃ、どーにかなるんじゃないですか?」

「く、薬ねぇ…。凌ちゃん痺れ薬とか頼めばくれるかな?」

「睡眠薬くらいなら不眠症と言えば誤魔化せるかもな」

「この際だから、使えるモノは使うべきかと」

「そっかー。それもそうだよねー。じゃあ帰りに病院寄ってお願いしてみる?」

「善は急げだ!では、武運を祈して乾杯!」

「「かんぱーい」」

「って、だから何で圭介が音頭を取ってんのーっ」











「……と言う会話が聞こえますが、どうしますか?」

「上等じゃねぇか、ヤれるモンならやられてやるよ」

「そうですね。是非に」

「いや、お二人とも。そーでは無くて…、」

市中取締役新選組の包囲網を最大に駆使し、あっさり居場所を特定した土方と松平。と、今回巻き添えになった松岡は
3人が居る部屋から襖一枚で遮られた隣の部屋に居た

「突入します?」

「んー…もう少し様子見としよう。このまま酔わせた方が後々、都合が良い」

「え、都合が良い…?」

「店から出た所を確保だ」

「病院行くとか何とか、盛り上がってますけど?」

「酔っ払いは門前払いに決まってンだろ。しかも高松の事だ、苦情がコッチに回って来ンだよ」

「梯子酒も却下。大鳥さんのあの様子だと明日に残るのがオチですから」

それなら尚更、いま止めに入った方がいいんじゃないのか?と松岡は思ったが
なんせ相手は蝦夷共和国を裏で牛耳る副総裁に、鬼だ猛将だと奉られる軍神様。
松岡は賢くも二人に従う事にした
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ