Serial-novel

□HappyなX'mas…?
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「明日は何の日か知ってる?」

コーヒーを運んできた田村銀之助に、榎本が訊いた。

「いいえ、存じません」

田村は首を振る。

「クリスマスと言って、西洋のお祭なんだよ。クリスマスの前の晩にはね、赤い服を着たサンタクロースというお爺さんがやってきて、子供たちにお土産をくれるんだって」

榎本は笑顔で説明する。
田村は盆を抱え、神妙な顔をして聞いていた。




「鉄、知ってるか?明日は、くりす何とかっていう西洋の祭なんだってよ」

台所で市村鉄之助を捕まえた田村は得意そうに言った

「そんで今夜は、赤い服を着たさんたろーとかいう爺さんが、子供に土産を配るらしいぜ」

「爺さんが土産を配る??赤い服って、額兵隊か?」

市村は首をかしげる。

「額兵隊に爺さんはいないだろ。兄さんの間違いじゃねぇの?」

「総裁は確か爺さんっておっしゃってたけど?」

「銀の聞き間違いだろ?」

市村は断言する。
田村は暫く考え、そうかもしれない、と呟いた。




「野村さん、さっき銀に聞いたんですけど、明日は栗の祭だそうですよ」

市村は廊下で野村利三郎を呼び止めて言った。

「栗の祭?何だそりゃ」

野村は怪訝そうな顔をする

「西洋のお祭だそうです。榎本総裁から聞いたって言ってましたよ。それで今晩、額兵隊の三太郎とかいう人がお土産を持って来るんですって」

「はあ?額兵隊の三太郎?鉄、そりゃ恂太郎の間違いじゃね?」

野村は笑って市村の肩をばしんと叩く。

「恂太郎?」

「隊長の星さんだよ。お前も知ってるだろ?そっか、星さんが来るのか。相馬には報せたか?」

「…いいえ」

じゃあ俺が伝えておくと、野村は足早に廊下を戻っていった。




「相馬、相馬、お前、聞いてるか?今夜、額兵隊の星さんが来るんだってよ」

「星さんが?」

部屋で銃の手入れをしていた相馬主計は、顔を上げて野村を見た。

「さっき土方先生にお会いしたけど、そんなことは言っておられなかったぞ」

「それじゃあ、まだご存じねぇんだよ。銀が総裁から聞いたって言ってたから、急に決まったんじゃねぇの?明日、西洋の栗の祭ってのがあってな、それで土産を持って来るらしい」

「何だよ、その栗の祭って」

「俺も知らねぇけど、栗尽くしの宴会かなんかじゃねえの?」

「栗尽くしの宴会?なんだソレは。盛り上がるのか?」

「だから知らねぇよ。栗おこわとか、栗きんとんとか、栗の食い放題みたいな?」

「野村、西洋の祭で栗きんとんはないだろう」

相馬は苦笑する。野村はきょとんと相馬を見た。

「西洋で栗といったら、そうだな、モンブランとか、マロングラッセとかだろ」

「それって食いもんなのか?主計ちゃん、物知りー」

野村は尊敬のまなざしで相馬を見つめる。
それを相馬は少し鬱陶しそうに見返した。

「ちゃんはよせ。この前、カズヌーブさんに聞いたんだ。とにかく、星さんが来るんだな」

「ああ、そうらしい」

先生にお知らせしてこよう、と言って相馬は立ち上がった。




「あ?栗の宴会?」

シャツのカフスボタンを留めていた土方が片眉を吊り上げた。

「野村の話では、額兵隊の星さんが今夜持って来るそうです」

相馬が答える。

「星くんが?なんでだよ」

「さあ?榎本総裁がおっしゃっていたそうで」

「はぁ・・・?」

土方は次に外套を羽織ろうとしていた手を止めた。

「先生、お出かけになるところだったんですか?」

「あ、まぁ、な…。お前、ソレ本当に榎本さんが言ってたのか?」

「はい。銀が聞いたそうですけど。…なにか?」

「ぃいや、なんでもねぇ。ご苦労さん。わざわざ星くんが来るのに擦れ違うところだった」

土方はそう相馬を労い部屋から出て行くのを見送り、袖を通した外套をまた脱いで再び衣紋掛けに引っ掛けた。
そして、思案する。
確か、今夜は榎本が2人で外食しようと(守衛に内緒で)言っていた筈だが、
それがなぜ、星が栗を持って来るというのだろうか。
予定が変わったのか、また榎本が余計な事を始めたか。と土方は独りで首を傾げた。



To be continued…

HappyなX'mas…?A




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