あぁ、麗しの人魚姫
story8 旅立ちは涙をふいて
ツナ姫さまの旅立ちの日がやって来ました。
心配故に反対されることが目に見えていたので多くの者に秘密の旅立ちは一部のお后様だけのお見送りでひっそりと行われました。
ツナ姫さまはこれで本当に一人きりで今まで育ったこの海を出るのです。
静かに再会の誓いを込めた別れをすませたツナ姫さまは、どうしようもなく潤んでしまう瞳を自覚しながらもお后様たちに向かって気丈に笑ってみせました。
「それでは、お母様方いってまいります」
「ツナ姫、無理はしないで…人間には気を付けるんですよ」
「はい…お母様」
「あなたにボンゴレの加護がありますように」
「お母様方、ありがとうございます。オレ…多くの人魚に出会うよ。そしてきっと…きっと見つけてみせる。心を分かつ唯一の人を、そして帰ってくるから」
「えぇ、私たちはずっと待っているわ…行ってらっしゃい」
「はい!!いってまいります!」
泳ぎだしたツナ姫の空の色を映した尾ビレに太陽の光が反射して虹色の輝きを残します。
段々と小さくなっていく背中をお后様たちは祈るような気持ちでいつまでも見つめていました―…
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