□Trick or Treat!
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※女装




甘ったるいにおいが漂う部屋でテーブルに向かい、一人せっせと明日の用意をしていると、後ろからそろりそろりと静かに何かが近づいてくる気配がした。『何か』が何なのか、そして何の目的でもって近づいて来るのかお見通しな俺は、手元にあるパンプキンクッキーを一枚拾い上げる。

「Trick or Treat★ …お菓子くれないと悪戯しちゃうぞv」
「ほら」

「むぐっ!!」

俺は後ろから抱きついてきたアルの口が俺のどこかに当たらない内に、クッキーを素早くそこへ押し込んだ。

「モグモグ。………ごっくん。兄さんダメじゃないかぁ。ソレは明日子どもたちに配るクッキーなんだよ?」
「…だってお菓子やらないとお前悪戯するんだろ?」

「………………。」

図星なアルはしばらく沈黙した後

「悪戯させてよぅ」
「ダメ〜〜〜。」

「お兄たぁんv」
「だ…ダメだっつの…」

今度は甘えんぼ攻撃に出てきた。…可愛くてつい頭を撫で回してやりたい衝動に駆られるが、目の前の作業に集中したい為、やんわりと無視する。

「むぅ〜。」

俺の手元には大量のパンプキンクッキーが乗った皿。その横に小さな袋と緑色のリボン。作業とは、普通のサイズより少し大きめに作られたこのクッキーを袋に一枚入れて、リボンでその口を塞ぎ、更に蝶結びにしていくという作業だ。…蝶結びだけに超面倒くせぇ。

ちなみにアルはキッチンでクッキー製作担当だ。

「今焼いてるので最後か?」
「うん。少し多めに焼いたからラッピングが終わったらお茶にしようよ」

「よっしゃ!そうと決まればはやく終わらせちまおっ♪」
「ふふ、兄さんたら…」

思わず親父ギャグまで飛び出す程に退屈この上ない作業も、あともう少しなのだと分ると俄然やる気が沸いてくる。

俺は待ち遠しいティーブレイクに胸を躍らせた。




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