□キミノ、トナリ。
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※デリヒ葬儀前日




「…未来を?」
「…ダメ、ですか?」

「…ごめんね。私の能力では…人の未来を覗き見る事まではできないの」
「そう…ですか」

「…どうしてアルは未来なんか見たいの?」




「僕は…」




今の僕には『それ』を口に出すことさえ怖かった




三年間の空白はこんなにも僕にトラウマを残して




大好きな兄さんの笑顔にさえ不安を煽られた




いつかまたくるかもしれないその日が怖くて怖くて仕方がないなんて




カッコ悪すぎて言えないよ…




「…大丈夫よアル」
「え?」

ずっと想いに耽っていて気づかなかったけど、いつの間にかノーアさんが僕の腕に触れていた。

「私にはこんな事しか言えないけど、きっと大丈夫だと思う」

僕の思考を読み取って、僕の不安を、恐怖を理解した彼女が気を使ってくれていたのだった。

「…ありがとう…ノーアさん」

彼女に『大丈夫』と言ってもらえても僕のこの不安が消える訳はなかったけれど。

せめてもの、という彼女の気遣いに感謝して、うまく笑えているかはわからないけれど僕も彼女に笑い返してみた。

「…」

そんな僕の笑顔を見た彼女は何とも言い難い顔をしていた。

やっぱり僕はうまく笑えていなかったのかな…

「…アル、はやくうまく笑えるようになるといいわね」

やっぱり…

「あの…僕…ごめんなさい…」
「いいのよ」

「…ごめんなさい…」
「我慢してないで泣きたいなら泣けばいいじゃない…それで少しは楽になれるならその方がいい。…エドがいない今のうちに」

「えっ?」

もう彼女は僕の腕に触れていなかった。

となると僕の方が相当情けない顔を晒しているに違いない。

「…泣きませんよ僕は」

僕はここで

兄さんと僕そっくりな人が暮らしていたというアパートの、この部屋では尚更泣きたくなかった。

…泣くわけにはいかなかった。




ガチャリ。




「ただいま〜」

その時ドアが開いて兄さんが部屋に入ってきた。

「おかえり兄さん」
「…悪かったな遅くなって。んじゃ早速やるか、アル。」

「うん!」

今僕は…うまく笑えているのだろうか




*
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