□キミノ、トナリ。
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ちょきん。




「うわっ。ちょ、今すごいバッサリ…!」
「大丈夫だって。心配すんなアル。兄ちゃんに任しとけ!」

「う、うん…」

少し暖かい午後。

日当たりの良い窓辺で

僕は三年間伸ばし続けてきた髪を兄さんに切ってもらっている。




ちょきん。

ちょきん。

ちょきん。

ちょきん。

ちょ…




「にっ、兄さん」
「んー?」

自分から頼んでおいてなんだけど兄さんの持つハサミがかなり速めのリズムを刻んでいるものだから僕はついつい口を挟みたくなってしまう。

「あの、もっとちょっとずつ切らない?」
「…大まかなとこでゆっくり切っててどーすんだよ。…ある程度切ったら慎重にやるって…アル。兄ちゃんを信じろ。」

「わ、わかった…」

口ではそう言うもののやっぱり僕の不安は消えなかった。

鏡なんて近くになかったし今更「鏡持ってきて」なんて言ったら僕が兄さんを信用していないと思われるかもしれない。

…それだけは避けたい。




今僕にできる事。

それはただ、ドキドキしながら兄さんの刻むリズムを聞いている事しかないのだ。




僕は不安をやり過ごすべく

ハサミの音に集中すべく

ギュッと目を瞑った。




…ちょき。




…ちょきちょき。




ちょきん。




…あ。リズム変わった。

そう思って目を開けると向かい合わせになって僕の髪を切っている兄さんと目が合った。

「…慎重に、だろ?」
「あ…うん」

兄さんはふわりと僕に笑いかけて、また髪を切る事に専念し始める。




うわぁ…どうしよう。

顔が熱い。

僕は顔を見られたくなくて、少しうつむいた。




あぁ。

やっぱり兄さんて

兄さんなんだなぁ…

どうしようすごくあったかいよ…




僕は涙が出そうになるのを必死に堪えていた。




「エド、アル、もうすぐお昼ご飯できるわよ」
「わかった。でも先に髪終わらせちまうから…」

同じ部屋の台所で、僕らから少し離れた所でノーアさんがお昼ご飯を作っていた。

で、もうすぐできるって言って、兄さんはわかったって言った。




ちょき。




ちょき。





ちょきちょき。




でも結局兄さんはこのゆっくりとした、僕が安心できるペースを最後まで続けてくれた。




*
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