鋼
□Santa Claus?*
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※黒アル
月がとても明るい夜。
「う〜寒っ!」
俺は肌を刺すような寒さに体をちぢこませながら自分のベッドに入ろうと布団を捲りあげた。
「兄さん…」
「ん。…ほら。」
布団に身を滑り込ませようとした時ちょうど後ろからアルに呼ばれるが振り返らずとも意図する事はわかってる。
俺が布団の中に入り、そして少し詰めてもう一人分のスペースを作ってやればいつも通りアルがそろそろとそこに収まる。
「おじゃまします」
可愛い可愛い弟は幾分か俺よりもまだ背が小さい。だからかついつい毎晩甘やかしてしまうんだ。
「寒いね」
俺たちは身を寄せ自分たちの体温をお互いにわけ合う。
「あぁ…雪でも降るんじゃねぇか?」
「うん…そうなったら…ホワイトクリスマスだね…」
「…そうだな」
こっちの世界に来てから俺たちはあちこち旅をしたり調べモノをしたりと忙しく、今日も散々歩き回ってやっと今ベッドに入る事ができた。
疲れているのだろう。
アルの声はだんだん眠そうに低く小さくなっていくが必死に俺と話をしようとしている。
それは昼間ほとんど調べものばかりで移動時以外はあまりこんな風に会話できないからなのかもしれない。
そんな弟の甘えん坊が俺の中に心地よくじんわりと染み渡る。
「…明日…ケーキとか…食べようね」
「はは、お前と過ごす久しぶりのクリスマスだもんな。いいぜ、何でも好きなもん買ってやるよ」
「…」
「…アル?」
ついに眠そうなアルの声は完全に途切れてしまった。変わりに規則正しい寝息が聞こえてきて思わず笑ってしまう。
「…可愛い奴め」
そう言ってアルの頬にキスを落として、俺も目を閉じた。
*