鋼
□Santa Claus?*
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俺は何も見えない状態で瞼の裏に浮かぶ鎧だった頃のアルを見ていた。
まだアルが鎧だった頃。
その頃アルは一緒に寝る事ができなかったしこうして寄り添っていても体温を一方的に奪われていくだけで分け合う事ができなかった。
…そういえば俺はアルが止めるのも聞かずピッタリくっついて寝て…体を冷やしすぎたあげくに風邪をひいた事とかあったっけな。
それに世間がクリスマスだって時も俺たちはひたすら賢者の石を探し回っていて祝おうだとかケーキを食おうだとかそんな浮かれた事を考える余裕なんて全くなかった。
アルを一日も早く元に戻してやりたい。
そして
アルと一緒に寝たい。
アルと一緒に食いたい。
アルと一緒に触れ合いたい。
アルの笑った顔がまた見たい…。
あの頃俺が求めるのはただただそればかりだった。
「…」
俺は横にいる、今は暖かい生身のアルの体温に目を細めながら昔からちっとも変わらないものも同時に感じていた。
変わらないもの。
それは一緒にいるだけで俺の心を暖めてくれるというアルの不思議なチカラ。
鎧だった頃からアルはそのチカラで俺をいつも暖めてくれていた。
そしてその暖かさに包まれていたからこそ俺は今までこうしてやってこれたんだと思う。
救われてんのはいつも俺だ。
アルの優しさに。
アルの暖かさに。
そう。形は違っていても俺にとってはいつだって同じ
『アル』
だった。
だからアルが体を取り戻した今でも
昔から変わらないものが
俺にも一つある。
それは
『アルを想う気持ち。』
姿が鎧だろうが生身だろうが俺が愛してるのはいつだってアル自身。
この気持ちは何があったって絶対にこれからも変わらないと思う。
それにしても。
「…本当に寒いな…」
明日のクリスマスは今まで蔑ろにしてた分楽しく過ごそう。
「な、アル…?」
そう呟いて俺はようやく思考を停止した。
*