□脅迫
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※弟依存の激しいノーマル兄さんとアブノーマルな弟




「じゃあね」

そう言って僕はベッドから離れた。頬がジンジンする。今し方ひっぱたかれたからだ。

「じゃ…じゃあねって…おい…」

背後で兄さんが戸惑った声をあげる。面白いね、ついさっきまで僕を睨み付けてお説教してたくせに。

「おいっ!アルッ!!」
「うるさいな、聞こえてるよ」

あえて僕は振り返らなかった。ドアに向かって歩きながらつっけんどんな返事をする。

「じゃあねって何なんだよ…どういう意味…」
「そのままの意味だよ?バイバイ、サヨナラ。…つまりお別れって事。」

「な、何、言ってんだ…」
「だからさよーなら。」

淡々と応える僕に、逆に兄さんはどんどん狼狽えていった。

「出か、けるんだよな?後で帰ってく…」
「兄さんこそ何言ってんの?もう帰って来ないよ。…じゃあね、今度こそ一生サヨナラ」

「アルッ!!」


僕は悲鳴をあげた兄さんを無視してドアノブに手をかけた。









「…何してるの」




でもかけただけ。





「…い…行くな…」

ついに我慢出来なくなった兄さんが、ベッドから飛び降りて僕にしがみついてきたのだ。

「僕、行くよ。もう兄さんと顔合わせてたくないもん。…追いかけて来たって無駄だからね。」
「何で…何でだよ…お前…何でそんな事言うんだよ…」

「兄さんに拒絶された。…理由はそれで十分じゃないか」
「だ…だから…さっきも言ったけど…また今まで通り普通にやっていけば…」

「普通?………兄さんさぁ、さっき僕に襲われかけたんだよ?あんな事があった後でまた今まで通りにやっていけるっていうの?」
「なかった事にするよ!だから…」

「僕はなかった事になんかできないね」
「アル…ッ!」


「例えばさっきの事をなかった事にしたところで僕は兄さんを性的な対象として見る事を止められないし、またいきなり襲うかもしれない」
「で、でも…」

「僕は兄さんが好きなんだ。兄としてじゃなく、一人の人間としてエドワード・エルリックを愛してる。」

愛してる、にしてはかなり自分勝手だけどね。

「…だからもう、さっきみたいに拒絶されたくない。離れさえすれば襲えないし拒絶もされない。だろ?………ほら、わかったらそろそろ離してくれないかな。」

しがみつく兄さんの手が震えてる。ふふ、今、何を考えているのかな?

「…行く…な…行くなよ…俺たち…たった二人きりの家族じゃないか…!」
「ダメだよ。兄さんはいいかもしれないけど僕には辛すぎるもの。…それに、あなたの唯一の家族の弟はさっき死んだでしょ」

「そうやって…一人にするのか…俺を」

そう、そうやって、心のオクをえぐってあげる。

「しょうがないじゃないか。理想の弟はさっき死んじゃったんだから。」

「俺が…拒絶したからか」

「いや、違う。っていうか、もともとそんなのいなかったのかもしれないよ。うん、きっと幻だったんだよ何もかもが。」
「何だそれ…今まで一緒に過ごしてきた思い出も…みんな幻だったってのかよ」

「本物だよ、偽りだらけのね」
「意味が…わからない…」

「だからさ、兄さんが愛してた普通の可愛い弟なんかもともといなかったんだよ」

さぁ、そろそろ決定的に突き放してやろうか

「そんな事ない…いる…ちゃんといる…何馬鹿な事言ってるんだ…お前はちゃんと…」

冷静な判断ができなくなるように。




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