鋼
□運命の人
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※デリ→エド
朝食を食べ終わってすぐ、僕らはテーブルに大きな設計図を広げた。
今日は二人きりでの作業。
…………少数精鋭だ。
「あ、すいません。この重しをその右端に置いてもらえますか」
「あぁ」
設計図はとても大きい。こうして広げて使用する時意外は邪魔にならないよう縦に丸めて保存している。
その為広げた時は紙に癖がついてしまっていて、そこかしこが丸まる。
それを防ぐ為に、広げる時は必ず重しを紙の端に置くのだ。
そうして紙の端々にきちんと重しが乗ったのを確認してから僕は
「それじゃはじめますか」
と言って笑った。
最近借りたアパート。高級と言うわけにはいかないけれど、それなりに小奇麗な建物で一階が花屋、そしてその二階に僕の部屋はある。
今日はいつも食事をとる為だけに使っている、このリビングが作業室だ。
作業といっても今は、今回の実験について何か重大な漏れはないかだとか、ミスは無いだろうかだとかを細かくチェックするだけなんだけれど。
しかしこれも『ロケットを打ち上げる』という大きな計画の為には重要な作業の一つなのだ。
…ふと、いつもの視線に気が付いて僕はそちらを見やる。
「…っ」
するとその瞬間、今まで向けられていた美しい金色がタイミング良くフイと背けられた。
「……。」
「……。」
このやりとりも今となっては大分慣れてきていたので、僕はいつも通り気づかない振りをしてやる。
何事もなかったかのように再び設計図に視線を落とす。
しかししばらく経つとまた、注がれる視線に気づいてしまうのだ。
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