CODE GEASS

□後
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***




ある午後、廊下を歩きながら何となしに窓の外を見ると、今にも雨が降り出しそうな事に気が付いた。そのまま何となく等間隔に訪れる四角い風景を眺めながら歩いていると、いくつめかの窓の中で黒いマントが庭園にポツリと佇んでいるのを見付けた。




「…何をしているんだい」

わざと気配を消して近寄り、背後から話しかければビクリと肩が跳ねてルルーシュが振り返った。

「ああ、スザクか…。少し疲れたから風に当たってたんだ」
「雨が降りそうだよ」

「そうだな、降り出さない内に戻るとしよう」

紫色が僕からそらされる。ルルーシュが僕の横をすり抜けていく。

ああ、まただ。

「…何だ」

そのルルーシュの肩を、思わず掴んでいた。

「あ…いや、その」

自分でもどうしてルルーシュの足を止めてしまったのかわからなかった。睨まれはしなかったが再び僕を視界に捉えたルルーシュの目は嬉しそう、とは言い難いものだった。

ただ、僕にだけあまりにも素っ気ないから、

「ルルーシュってさ、」

………素っ気ないから?

素っ気ないからどうだというんだ、馴れ合いたいのか僕は?

そんな訳ない、ただ、あまりにもあからさまなのが気になったのだ。

「何か、僕に対して素っ気なくない?他の人にはそうでもないのにさ」

そんな訳ないのに、口をついて出たのはその、素っ気ないルルーシュに対して不満をぶつけるような言葉だった。

「…え?」

ルルーシュの顔が驚いたようになって、そして突然視界が悪くなった。

「うわっ、」

スコールのような激しい雨が僕たちに叩き付けられていた。

僕たちは走って王宮に戻った。

マントがほとんど役に立たない程強烈に降られてしまい二人とも濡れ鼠になってしまった。

「まいったな」

ルルーシュは言って、マントの裾を絞った。マントから追い出された雨水が床をはねる。

僕はそんなルルーシュに何故か

「…風邪ひいちゃうと大変だし、僕の部屋、ここから近いからシャワー浴びていきなよ。その間に替えを持ってきてもらえば良い」

こんな事を口走っていた。ルルーシュが困惑気味に笑う。

「いや、いいよ。お前の部屋も俺の部屋も距離はそんなに変わらないし少し我慢すれば…」

やっぱり断った。

とっさに口走った自分の言葉に自分自身少し戸惑ったがそれよりも『やっぱり』断ったルルーシュにまたイライラした。

「僕が日本人だからかい」
「え、」

「ごめんね、そうだよね、イレブンなんかと付き合うのは嫌だよね」

そんな事をルルーシュが思っているわけないとわかっていながら挑発した。こう言えばきっとルルーシュは

「違う!勘違いさせてしまったなら謝るが俺は断じてそんな事…」

…そう返してくるに決まってるから。

「じゃあ、僕の部屋に来てくれるよね」

低く言うとルルーシュは少し怖じ気づいたような顔で頷いた。




***




僕の部屋にルルーシュがいるなんて久しぶりだ。

「ス…スザク、」

ルルーシュは部屋に着くなりドアにへばりついた。

「…ルルーシュ?」

呼びかけるとルルーシュの顔は真っ青でかなり具合が悪そうだった。

「すまない、やっぱり、このまま自分の部屋に帰らせてもらうよ…何だか具合が、」
「ならベッドで休んでいきなよ」

「そ、そこまでしてもらうわけにはいかないから…」

ルルーシュがドアノブを捻って、ドアが廊下側に少し開いて、そして直ぐに閉まる。僕がルルーシュを逃さない為にドアノブをルルーシュの手ごと引いたのだ。

「な、」

ついに肩で息をし始めたルルーシュが何をするんだと見つめてくる。僕は無視してルルーシュの手を引きベッドの方へ向かう。

「息切れしてるじゃないか、ほら、そこのベッドに横になって」
「や、やめろっ!」

大きく叫んだルルーシュに驚いて歩みを止めて振り返ると、身を縮めながらルルーシュはガタガタと体を震わせ、今にも泣きそうな顔をしていた。



「ルルーシュ?」
「違う、すまない、違うんだ…」

まるで以前僕に飼われていた時のようだ。

「スザクが悪いんじゃないんだ…自分でもよくわからない…けど、俺は何故かお前が苦手なんだ…。お前といると落ち着かないし、何故か怖くなる…でも決してイレブンだからじゃない、理由はわからないんだ、でもこの部屋も、よくわからないが凄く嫌なんだ、すまない…。だから、」

ルルーシュは一気にそう言って心底すまなそうに放してくれとうなだれた。僕はルルーシュを思い切り引き寄せてその唇に自分のものを重ねた。

「っ。」

…途端、左頬に痛みが走る。

「…何の、つもりだ…っ」

後退るルルーシュは鬼のような形相で僕を睨み付けていて、右手は僕をひっぱたいた時のままの形で止まっていた。

「…何だろうね?」

僕はヘラリと笑ってみせる。ルルーシュは走って部屋から飛び出していった。




左頬をひっぱたかれても、僕の気持ちは少しも落ちなかった。

僕は高揚していた。明らかに喜んでいた。自分自身をごまかしきれない程どうしようもなく。

ルルーシュが僕を無意識に覚えていた事が嬉しかったのだ。

そうして、嬉しくて、そうして、僕はキスをした。ルルーシュにキスをした。何故、考えたくない、嘘だ、

「は、何を考えてるんだ、馬鹿か俺は」

絶望した僕は立っているのが億劫になりベッドの縁に座り込んだ。

シャワーなんて浴びずに今日はもうこのまま寝てしまって、明日は酷い風邪でもひけばいいと思った。




終わり

+++

(*^p^*)明日からはルルーシュに愛想笑いすらしてもらえなくなるけどそんなところにひねくれた喜びを見出すスザク(M発動)

11.07.19
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