ロマンスの神様
□掃除と寄り道と
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「父さんが誕生日に買ってくれたんだけど…僕これあんまりやらなかったんだよね。欲しくもなかったし…」
アルは小綺麗なコントローラーを眺めて苦笑した。
「マジで?俺なんかねだってねだってやっと買ってもらったんだぜ?!」
「えぇっ?!」
アルは信じられない、という顔で叫ぶエドに勢いよく顔を向けた。
「な、何だよ…」
今度はアルが信じられない、という顔をしていた。
「ねだってねだって!?にっ、兄さんおねだりしたの!?」
「あったり前だろ!?あんな高いもんをそうやすやすと子どもに買い与えられる程うちに余裕なんか…」
「どうやってっ?!」
「…は?」
「どうやっておねだりしたの?!」
「どうやってって…別に普通だけど」
「普通ってどんな!?僕わかんない!やってみせて!僕母さん役やるから!!」
アルは突然そう言いだすなり鼻息も荒くエドに近寄って来た。
「はっ?何が?!」
どうやらアルはエドが苦労して手に入れた事実よりも手に入れるまでの『苦労』の方に興味があるらしかった。
「はい僕母さん!兄さん子ども!ここデパートのオモチャ売り場ね!!」
アルはドアの辺りで訳がわからず立ち尽くしているエドの右手を握ると自分、それからエド、荒れた部屋を指指してテキパキとシチュエーションを設定した。
「じゃあいくよ。……ハイッ!」
「な、何が?」
「何がじゃないよ僕におねだりするの!僕は母さんで目の前には兄さんが欲しくてたまらない専用コントローラーがあるんだよ!!」
「何で俺がそんな芝居しなきゃなんねんだよっ!?」
「やるまで終わんないよ!?」
「何でだよ!!」
「いいから!いくよ!…ハイッ!!」
「…え、えー…と…」
「何?」
アルは何やらもじもじしているエドを穴が開くほど見つめていた。
「こ…これ、欲しい…買って?」
部屋を指指しながらエドはアルを上目使いに見上げた。
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