ロマンスの神様
□悩殺
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「はぁ…」
ベッドの上で仰向けに寝転がったまま形だけで、全く読んでいなかった本を胸の辺りに置くとエドは視線だけをドアに向けた。
先ほどしょんぼりしながらアルが出て行った場所に。
(泣いてたな…)
エドはアルが出ていく少し前、ついにすすり泣きだしたのを想い、少し罪悪感を感じていた。
(意地張りすぎたかな)
別に怒っているわけではなかった。
ただ、アルがあんな事をしていた事実を知ってしまってからというもの、アルに対してどんな態度をとったらいいのかわからなくなってしまっていたのだ。
自分でもどうしてこんな気持ちになるのか解らない。
こんな事は初めてだった。
別に嫌悪感を抱いているわけではない。
ダンボール箱をひっくり返してしまったあの時も、嫌悪感は抱かなかった。むしろ…
(むしろ…)
「違うっ!!!」
エドは今日何十回目かになる否定の言葉を自分自身に叫んだ。
実は昨日から何故自分がこんな気持ちになるのか、エドなりにいろいろと考えては結論を導き出そうとしていたのだが、いつもある一つの考えに辿り着きそうになる度に頭を振ってはそこで無理矢理思考を中断させる、という作業を延々繰り返していたのだ。
「あー!もうだいたい何で俺がこんなに悩まなきゃなんねんだ!悪いのはアルなのに!!」
『兄さんごめんなさい』
エドのイライラが爆発したその時、ふとアルの謝る姿が思い浮かんだ。
「…くそ…バカアル」
(しょうがねぇ…こんな事を繰り返し続けるのは疲れた…だからもう無理矢理終わらせよう)
そうだ。
アルがもう一度謝ってきたなら、素直に許してやればいいのだ。
エドはベッドから起きあがるとドアに向かって歩き出した。
*