ロマンスの神様
□もう我慢出来ない。
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土曜日の朝。
雲一つない空はまだ薄暗く、太陽が登る少し前。
早朝という事もあり他の家々同様、エルリック家の家の中はまだ静まり返っている。
そんな中、エドの部屋では珍しい事が起きていた。
「よしよし…今日は晴れるな」
貫徹したわけでもないのにすでにエドがベッドから起き上がっているのだ。
いつもはアルの手助けがないとなかなか起きないエドであるのに。
「よし、んじゃ早速行くか」
エドは窓からお天気チェックをした後、ソロリソロリとなるべく音を立てないように廊下に出て、そしてアルの部屋を通り過ぎ母親と父親の眠っている寝室の前で足を止めた。
「………」
そしてこれまたそっとそっと、ドアノブを捻って音もなく部屋に侵入する。
(えぇと…)
中に入るとダブルベッドの上に母親と父親がまるで新婚のように抱き合って寝ているのが見えた。
二人とも実に幸せそうに寝息をたてている。
「……………。」
エドは何故か一瞬、父親の口と鼻を枕か何かで塞いでみたいという衝動に駆られたが(トリシャが起きてしまうかもしれないため)すぐに諦め、そこはあまり見ないようにした。
それから二人の寝ているベッドの傍らにあるサイドボードの前まで来ると、そこに置いてある目覚時計を手に取り(時間をセットする用の)針を三十分ほど先へ進めておいた。
(これでよし…と)
エドは目覚時計を元あった場所に戻して再び音もなく寝室から出て行った。
*