ロマンスの神様

□ひとまずは。
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「あーーー…お、おはようアル…」
「はい、おはよう」

エドが気まずそうに挨拶するとアルはニッコリと返した。

「これ、庭で咲いてたんだけど凄く綺麗だったからリビングに飾ろうと思ってさ。今摘んで来たんだ」
「そ、そうなんだ」

アルの手にある花を見つめ、エドはぎこちなく笑った。

「兄さんはまた僕を捜しに外へ?」
「あ…ぅ…えぇと………。だって家中捜してもお前、どこにもいなかったから…」

「だから今頃僕がハイデリヒさんをボコってるかもって?」
「おっ、お前の事疑ったわけじゃ…」

オタオタするエドに、アルはあぁっ、と叫んで顔を両手で覆い、悲しみを表現しているようなポーズをとった。

「酷いっ!!僕がそんなに信用できないんだ!?兄さんにとって僕ってそんなにいい加減な存在なのっ!?」
「ちっ、違う!違うよアルごめん!!ごめ……………ん?」

慌ててエドがアルにしがみつくとアルの体は小刻みに震え、しかしよく聞いてみると手に覆われた内側からは笑いを堪えているような音が聞こえてくる。

「く…っくっくっ…」
「…アールゥ…?」

エドが恨めしげに呼び掛けると、アルは弾かれたように両手の覆いを外して笑い出した。

「あはははは!ごめんごめん兄さん!冗談だよ〜!!」
「てめぇアル!!人がマジで謝ってんのにお前って奴はー…っ!!」

「ふーんだ、ささやかなお返しだよーだ!兄さんだって結局は僕の事信用してなかったんじゃん!おあいこだよ!」
「しょ…っしょうがないだろ!?お前が普段から常軌を逸した行動を何の躊躇いもなく平気でやってのける奴なのがいけねーんじゃねぇか!!この独善者!!!」

「独善者ぁ!?僕のどこが独善者なんだよ!!」
「お前を構成する全ての細胞がだ独善者マンっ!!」

「そんな嫌な新キャラクターいらないよっ!!!」



アルは変なあだ名を付けられてプンスカ怒りながらも、エドの緊張した様子がなくなったのを見て内心暖かく笑っていた。





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