ロマンスの神様
□平和
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最初は周りの目が恥ずかしくてややぎこちなく始めたエドだったものの、ピットに何度もしつこくやらされてる内に段々それにも慣れて来た。
…一度羞恥心が吹っ切れると阿呆な事を公衆の面前で堂々とやらかす事はなかなか楽しい事だと思い始めてきた。
悩んでばかりいる今の状況の中ではとても有効なストレス解消法だとも。
「なあーにしとんのぉおお♪」
「いーろいろだぁあよぉおお♪」
この挨拶にすっかりハマった二人はお互いがトイレなどで少し離れ、再び顔を合わせる度にこの挨拶を交わした。
あまりにも頻繁にやらかす為、三時間目にもなるとクラスメイトの中でこの二人がおかしな挨拶をし合う度にわざわざ視線を向ける者などもういなくなっていた。
それでもまだ廊下などでやると他のクラスや他の学年の生徒たちにジロジロ見られていたが、もう恥ずかしいというより、むしろそれはエドにとってちょっとした快感に変わっていた。
それはピットも同じらしい。
お互い今日は妙にハイテンションで、わざと阿呆っぽく振る舞おうと頑張っていた。
しかし移動教室が終わった後、教室に帰る道すがらお互いをど突き合いながらスキップしていた時である。
エドは急に現実的にならざるを得なくなった。
それは廊下で擦れ違った、見覚えのある二人の男子生徒が少し驚いたようにエドたちを呼び止めたからだった。
「に…兄さん?」
「…とピットさん?」
呼び止められたエドはその声が誰であるか理解すると突然体が重くなり、ピョンピョン跳ねる事ができなくなった。
そして不思議な事に、今までずっと忘れていた羞恥心が忘れていた分だけドッと押し寄せて来るのを感じた。
顔が焼けるように熱い。
「…な…何してる、の…?」
「い…いろいろだよ」
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