戦国BASARA
□日曜日限定
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政宗は満面の笑みの幸村と、
「お噂通り、見事でござる!!」
色とりどりのケーキを目の前に脱力していた。
「やっぱりこのpatternだったか…」
政宗の隣では同じように元親が脱力し、ケーキを挟んで元就が無言で目の前の甘味を消費している。
四人がいるのはホテル日輪・一階のレストランで、その、レストランの一番目立つところには
『ケーキバイキング(日曜日限定)』
と書かれている。
「後で覚えてな、長宗我部」
政宗は仕方なく皿の上に載せたフルーツタルト一切れにフォークを差しながらボソッと呟いた。
「ク…クールにいこうじゃねぇか竜の兄さん」
元親は政宗と反対方向に視線をやる。
少し気取った感じのあるホテル・日輪の一階、レストランの日曜日は90%が女性で占められ、厨房側にある壁には長い長いテーブル、その上にはまるでお姫様のように可愛らしくデコレーションされたケーキ、ケーキ、ケーキ。
シェフこだわりの卵で作られたとろけるプリンや、契約農家直送の新鮮な果物で作られたフルーツゼリーなども置かれている。
そんなものを前に甘味好き女子らが目を輝かせないわけがなく、普段ツンケンしている女子もダイエットなんかをしているはずだった女子もそんなものはクソクラエ!とばかりに皆一様に恋する乙女のような様子でケーキに群がっている。
キャッキャウフフ、やだこれカワイー☆食べるのもったいなーい☆
…とまぁそんな、この場に居合わせるほとんどの人間の脳内には花畑が広がっているわけだ。
そしてそれは男子でありながら甘味に目がない幸村も同じだった。
「しかしながら政宗殿と長宗我部殿も甘味が好きとは知りませんでした」
モグモグとケーキを幸せそうに頬張る幸村。…その様子は心身共に疲労した政宗を癒した。
思わず頬が緩む。
いつもこれ以上なく可愛いと思える幸村が、甘味を前にすると更に可愛くなってしまうから大変である。一体どこまで可愛くなってしまうのか。
撫で回したい。
「い、いやぁ、しかしこんなところで会うなんて偶然だよなぁ」
幸村に見とれるあまり返事を忘れている政宗に代わり、元親が話を繋げる為にフォローを入れるが、そこには先程までだんまりだった元就が
「ほう、偶然。後をこそこそと付け回し辿り着いた先でお門違いな文句をぶつけにくるのが偶然とは知らなんだ」
鋭く突っ込んだ。
ケーキに夢中の幸村は特に意味を考えず聞き流し、政宗と元親がそれぞれ無言で甘味を口に運んだ。
「政宗殿が先程怒っておられた理由がやっとわかり申した。」
相変わらず幸村はケーキに夢中でおかしな空気にも全く気が付かない。凄まじいスルー力というか羨ましい程の鈍感さである。
自分以外の三人も自分と同じように甘味を味わいながら会話を楽しんでいると思っているので、いろんな意味でギスギスしたこのテーブルでは不自然な程明るいトーンだ。
「次回から良さそうな店を発見した暁には政宗殿と長宗我部殿にもお声をかけます故ご安心なされよ」
「真田…!」
ニッコリ笑った幸村に一際大きくキュンとなった政宗は(マジangel!!)、その、幸村の口元に生クリームが付いているというお約束のチャンスに気付き、迷わず右手を伸ばした。
「こちらを向くが良い真田」
「は?」
…しかし寸でのところで幸村が顔の向きを、隣の元就へと向けてしまう。
「童でもあるまいに」
「か、忝い」
そうして政宗が狙っていた生クリームは元就の持ったテーブル備え付けのペーパーナプキンによりあっさりとぬぐわれてしまう。
「んなっ!?」
俺のlove chanceが!!
悔しそうに目を見開いた政宗に、元就はチラと視線をやり、僅かに口角を上げた。
「…フン」
瞬間、政宗がカッチーンとなり、脳内にて先程俺の敵カテゴリーから幸村の甘味仲間カテゴリーへと移動させた元就という人物の位置を、再び俺の敵カテゴリーに移動し直したのは言うまでもない。
そんな政宗の横で元親はただただ驚愕していた。
俺の知ってる毛利違う!!
甘味を囲む、四人のテーブルの空気がギスギス感を更に高める。
幸せな空気ばかりが漂うレストラン内でそこだけが浮いていたが、唯一幸村だけがレストランの空気に溶け込んでいた。
「政宗殿、そんな少量で足りますのか?」
しばらくして、幸村のその一言で立ち上がった政宗は元親の皿と、ついでに自分の皿を持ってケーキを盛りに行くと、自分の皿には五つ、元親の皿には盛れるだけ盛って帰ってきた。
ケーキタワーでござるな!と笑う幸村と、デコレーションが台無しだと非難がましく睨む元就、そして見たことがない程の山に盛られたケーキを前に固まる元親。
仲良しかどうかはさて置き、全員がイケメンであるこのテーブルは女子たちの視線を集めないわけがないのだが知らないのは本人たちばかり。(又は気にしていない)
ちなみにこのケーキバイキング、お残しが多いと罰金が発生する。
おわり。
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(*^^*)オクラさんとユキタンの仲良しエピソードが書きたかった!
てゆかこれ、異変のオマケのオマケという話だったんですが間が開いたのとオマケのオマケではしつこすぎるので止めました(笑)
12.06.06