戦国BASARA

□紅色蝶々
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※17歳兄政宗×12歳弟幸村
※戦国
※兄上が痛い
※ショタ幸村注意
※間接的に性的表現アリ




その日弁丸は元服を無事に済ませ、名を幸村と改めた。

12歳になり半年過ぎた頃であった。

これでようやく一人前として認められたのだと嬉しくてしょうがない幸村は尊敬する大好きな兄、政宗にすぐにでも誉めてもらいたく足を速める。

夕餉の時間、使者を伝って部屋に呼び出されたのだ。兄は常に忙しく、昼間顔を合わせる事ができなかったので、優しい兄の事、幸村としては明日でも明後日でも構いはしないのだがきっと今日中にと考えたに違いない。これから祝いの言葉がもらえるのだろうと幸村の顔が緩んだ。

兄、政宗はいつでも幸村に優しかった。溺愛、といっても過言ではない。

多忙に追われる中ほんの少しでもと暇を作ってはできる限り幸村に顔を見せにやってくる。そして幸村がワクワクするような戦の話を聞かせたり、南蛮の珍しい話を聞かせ驚かせてくれもする。時には幸村の大好きな甘い菓子を政宗自ら作ってやったり、値の張るものをいくつも買い与えてやり、また時には剣の稽古や将棋の相手、こっそり遠駆けにも連れ出してくれた。

幸村がイタズラをして怒られるといつも問答無用でかばうのも政宗だ。

幸村の身の回りの世話をする人間を普通の人間ではなく優秀な忍にしたのも。護衛にもなるし、鼻が利くので微かに混じる毒にもすぐ気付くだろうと思ったからだ。

政宗は以前毒殺されそうになり生死をさ迷った過去があった。間違っても弟にはあんな思いはさせまいと決めていたのだ。

政宗はとにかく、いつでも全面的に幸村の味方だった。

幸村も政宗の愛情を真っ正面から受け止め、素直に思い返しよく懐いている。

端から見たらこれ以上はないというほど仲むつまじい兄弟愛で、家臣など周りの者たちも微笑ましく見守っていた。




「兄上、弁…幸村です」

幸村は政宗の部屋の前で声をかける。中から聞き慣れた兄の声で入れ、と返事が返ってきたのでサッと障子を開けた。

兄は褥の上でゆったりと座し、片手に杯を持って笑っていた。

「よう弁丸、夜中にご苦労だったな」

弁丸、と呼ばれ幸村はいつもの癖でつい返事してしまいそうになったもののハッとして唇を尖らせる。

「兄上。某はもう弁丸ではなく幸村でごさいます」
「いや、お前はまだ正確には弁丸だ。」

手招きをされ、幸村は兄の横に腰を下ろした。そうして杯を渡される。

「お前、まだ夜の儀はやってねぇだろう?」
「夜の?」

両手で持った杯を、政宗の持った徳利が酒で満たす。

「元服の儀は昼と夜両方やるんだよ」
「そっ、そうなのですか?」

まぁまずは飲め、と促され幸村は杯を口元で傾けるがすぐに眉が寄った。

苦い。不味い。変な味。

こんなものより甘い菓子が良い。

そうは思ったが全て飲み干す。それが元服を済ませた男子たるものと思ったのだ。

途端、喉がカッとして熱くなり、顔も火照る。

「良い飲みっぷりじゃねぇか」

それでもよしよしと頭を撫でられると嬉しくなった。

「兄上、それで、夜の儀とは?」
「ああ…」

政宗は幸村から杯を取り上げると先程幸村がしたように自分も酒をあおった。

「弁丸が知らなくても無理はない。これは身内だけで密やかに行われる、公には知らされる事のない儀だからな」
「なるほど…」

「夜の儀はな、兄弟でしかできない」
「兄上としか?」

「そうだ。弁丸は俺としかできない」
「はい」

真面目に言う兄に、背筋を伸ばしこちらも真面目に返す幸村は拳を握り締めた。

「弁丸…」

する、と。

政宗のゴツく大きな手が幸村の頬を滑る。

「兄上…?」

何を、と問うはずだった唇は政宗の唇で塞がれ、幸村はただ目をパチクリさせた。

何故口と口をくっつけたのだろうと考えたが、兄の言葉にそれは中断させられる。

「夜の儀を始めるぞ弁丸。多少辛いかもしれないが最後まで耐えろよ」
「あっ、は、はい兄上!よろしくお願い致しまする!」

体を少し後ろに下げ、褥に手を着き深々と頭を下げれば、もういいとばかりに兄の手が脇に滑り込み体を持ち上げられる。

「なるべく優しくしてやるからな」
「そんなに辛いのですか…?お、お手柔らかに願います兄上…」

とさりと静かに褥に寝かされた小さな幸村に、だいぶ体格差のある政宗が覆い被さる。

「大丈夫だ、お前なら耐えられる」
「はい、兄上!必ずや耐えてみせまする!」









幸村は兄が大好きだった




兄はいつだって優しくいつだって自分の為を思いいつだって自分の味方だった




だからその夜も兄からの仕打ちを元服の儀として何の疑いもなく受け入れ、最後まで耐えた




自分の不利益になるような真似を兄がするはずはないと盲目的に信じ切っている




その上まだ心身共に幼い幸村が、どうして政宗の欲などに気付こうか。




『儀』が終わった後も、政宗によく耐えたな"幸村"と誉められ、自らを誇らしく思うと同時、兄に対し感謝までした。




幸村はどこまでも白く純粋であった。









***




情事の後、涙を流しながら微笑んだ弟を思い出す。

その弟は今政宗の腕の中でスヤスヤと健やかな眠りに就いている。

政宗は、我ながらよく元服まで待ったと己を誉めていた。

今まで弟に一度として欲を見せた事はなかった。

だがずっと、弟が、幸村が欲しくて堪らなかった。

無理にでも奪ってしまいたい程だったが嫌われたくはなかった。

だから待った。

弟が、これ以上なく自分を盲信し、何をされても、どんな馬鹿気た嘘を吐かれようとも疑問にすら思わなくなるまで




それと、元服だ




一人前になる為だと、痛くて辛い事を強いる為の大義名分が欲しかった。

だから政宗は幸村の体を奪う日を元服の日の夜と決めていた。




政宗は実の弟である幸村を愛している。

それは優しい家族愛などというものではなく最早狂気にも近い激しい執着であった。

幸村の存在は政宗の中で大部分を占める。

幼い頃に大病を患い、右目を失った政宗は、おそらく当主にはなれないと周りから踏まれたのだろう、それまで親しくしていた人間から冷たくあしらわれ、疎まれ、実の母親からですら微笑んでもらえなくなった。

政宗は孤独だった。

城内には政宗の両親は勿論、家来もたくさんいたが、政宗は誰からも必要とされず、誰からも微笑みかけられなかった。

そんな政宗に幼かった幸村にできた事といったらたかが知れていて、ただ見舞いに行って励ます程度であった。

その頃政宗と幸村は今程は仲が良くなく、母親からも見舞いに行く事を何度も止められたが幸村には兄弟である政宗が苦しむ様をただ放っておく事などできなかった。

何かしてあげたいという気持ちは山々だった幸村であったが、話しかける事くらいしかできない己に当時はジレンマを感じていた。

しかし、そんな幼い幸村の気持ち程政宗にとってありがたいものはなかった。

心底辛い中、唯一政宗を思い、笑いかけてくれた弟の存在は暗闇の中の一点の光であり、その存在が短期間で政宗の中を占めるには充分だった。

幸村だけが己の身内であると、政宗の中で決まったのはその時で、以降、回復した政宗に焦ってまた良くしてくれるようになった血縁や家来と表面上はうまくやる政宗だが、本当に心を開くのは幸村ただ一人である。

幸村といる時だけが政宗の心休まる時だった。

二人でいる時間はとても暖かく、そして優しい。

幸せそのものだった。









だのに。









そんな、愛しい弟に、唯一の家族に欲を感じるようになってしまったのはいつからだったか。

あれは、幸村に見合いの話がきていると耳に入った時の話だ。

一瞬で目の前が真っ赤になった。

冗談じゃない、ふざけるな。

幸村が自分以外の誰かと手を取り合うなどと考えただけで吐き気がした。

政宗の動きは速かった。

その日の内に見合いの話を潰してしまった。

それ以後も幸村に見合いの話が来るたび本人の耳に話が入らない内にことごとく潰した。

実を言えば、幸村には政宗の他にも年近い兄弟や家来などがちらほらいたのだが、政宗の命により接触はおろか、顔を合わせる事すら禁じられていた。

家来にも、必要以上の会話、世話する事を禁じている。遊び相手などもってのほかだ。

それは、過ぎる独占欲からで、幸村が自分以外の誰かと親しくなるのを恐れての事だった。政宗は幸村の事となると髪の毛一本入り込む隙もない程心が狭くなるのだ。

何も知らない幸村は政宗が会いに来るとそれはそれは嬉しそうに笑顔を向けてくる。

自分だけに向けられるのであろうその笑顔に、いつも政宗は満足していた。




…どこぞの、顔も知らない女と幸村が結ばれるなどあってはならない事であり、幸村はずっと自分だけを見ていれば良いのだ。そうして、毎日笑っていれば尚良い。




こいつは俺だけのものだ




政宗が作った団子を頬張りながら笑う幸村を眺めながらそう思った政宗の頭を、ふと何かが過ぎった。

ペロリと口端についた餡を舐めとる舌に視線が釘付けになる。

「………。」

幸村の小さな体を急に意識した。

一度、そうなってしまったらもうダメだった。

元々、無意識の内に意識しないようにしていたのかもしれない。この世で一番大事な幸村を、そんな目で見てはいけないと、良心がそうさせていたのかもしれない。

目の前の幼子は自分を優しい兄として信頼してくれている。…それを裏切るような事はしてはいけないと。

綺麗な綺麗な弟を己の欲で穢してしまうなど、背徳に他ならない。




だがしかし―――…




政宗は見合いの話を思い出して唇を噛んだ。

幸村が誰かのものになるなどどうしても許せない。




それならばいっそ、自分が―――




そうして政宗は決意した。

幸村を自分だけのものにするべく計画をたてた。

今日はその、第一歩をようやく踏み出せたといったところか。




幸村はこれで己も一人前になったのだから、戦に出て兄の役に立てると喜んでいたが、政宗にしてみると

「Ha、笑えねぇjokeだ」

冗談ではなかった。

あんな危ない場所へなど可愛い幸村をやる訳がない。怪我なぞしたらどうするのか。

政宗の頭の中では、もうこれからの幸村の生き方などとっくに決まっていた。

まず、元服祝いだと称して幸村の為だけに創らせた屋敷を幸村に与え、住まわせる。そして、習い事をこれでもかとやらせ、戦の事など考える暇がない程に忙しい日々を過ごさせる。真面目な幸村は何事も一生懸命に取り組むだろう。

夜の儀と教えた伽も、これからは兄弟の絆を深める行為だと教え込み毎晩でも行う予定だ。

幸村の屋敷は強固な守りで固め、しかし最低限の使用人としか触れ合えないようにする。今までよりももっと寂しく感じるだろう。

…その、寂しさから幸村がより政宗を求めるように仕向け、会える間は思い切り甘やかしてやるのだ。

幸村が習い事の中で何か夢中になれるものを見つけたなら思う存分伸ばしてやるのも良い。

幸村は政宗の作り上げた箱庭で日々健やかに、できるだけ楽しく過ごしていれば良いのだ。

危ない事や醜い事など幸村は知らなくて良い。

「お前の事は俺が一番良くわかってるんだ、大丈夫、絶対幸せにしてやる」

言って、政宗は熟睡する幸村の体を強く抱いた。




「お前も嬉しいだろ?なぁ、幸村ァ」




朝になったら、幸村の為に誂えさせた新しい紅色の着物を着せてやろう。元服祝いにと誂えさせた故にこの間のよりも少し落ち着いた紅色だがあれもきっとよく似合う。昔から幸村にはとにかく紅色が一番良く似合っていたのだから。




政宗は笑った。




おわり

+++

(*^p^*)自己満政宗様でござるー!!

押し付けがましいのって結構好き




12.04.15
 

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