ロマ神SS

□First kiss
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※小さいころの思い出




『…だよ…兄ちゃんいやだよ、ぼくいやだよ…!』




ある朝、その小さな子どもは泣いていた。

『ワガママ言うなよアルフォンス…しょうがないだろ』

その子どもの横にはもう一人同じくらいの背丈の子どもがいて、泣いている方の子どもの頭をよしよしと撫でながら自分だけはしっかりせねばと涙を必死に堪えている。

『やだやだやだやだ!!やだーーーーーー!!ぼく兄ちゃんといっしょにいる!!兄ちゃんといっしょじゃなきゃやだーーーー!!』
『アルフォンス!!!』

兄ちゃんと呼ばれた方の子どもは、アルフォンスと呼んだ自分の弟の両頬をぱちんと軽く叩くように両手で狭め、それからコツンと額同士をぶつけさせた。




『…………………………………………………………………………から』

そして兄は、甘い甘い砂糖菓子のようなお伽話を弟に話して聞かせる。

『ぐす…ほんと…?ほんとに?』

すると弟は泣くのを止めて期待に顔をほころばせた。

『ほんとだ。かならず…………………………………からちゃんと、おまえもやくそくまもれよ?』
『うん…うんっ。ぼく、てがみかく!兄ちゃんにまいにちてがみかくから!』

『いいこだ、アルフォンス』

兄はにっこり笑ってお伽話を信じた弟の唇に自分のそれを軽く押し付けた。


『じゃあ、またな。アルフォンス…』









段々と小さくなる兄の姿を車の後部座席から見つめながら、弟は今まで味わった事のないような感覚で胸がいっぱいになるのを感じている。



















(あぁ、またあの夢か)




アルは熱に浮かされながら、ぼんやりと自分の部屋の天井を見た。

「…………」

そしてけだるい体に顔をしかめながら近くに置いておいた携帯電話を手に取ると、時間を確認した。

「……まだ一時間しか経ってない……」

表示された数字にガックリしてからアルは携帯電話を再び手の届く位置に置くと、寝返りを打ち目を閉じる。

(次起きた時は三時間くらい経ってますように…)


そんな事を願いながら。




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