ロマ神SS

□First kiss
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「でも…やっぱりお前置いてくなんて…」
「本当に僕は大丈夫だから。兄さんはハイデリヒさんと行っておいでよ。ずっと楽しみにしてたじゃない」

そんな会話を交わしたのはつい一時間程前の事。




朝、アルは目覚めるなりまず自分の体に違和感を感じた。
その感覚は今まで生きてきた経験からみて間違いなく『風邪』だった。

しかし何とも運の悪い事に、今日は近所で毎年秋恒例の花火大会があり、そこにはアルもエドと行く事になっていた。


数日前から屋台であれを食べようこれをやろう、などと予定をたててはしゃぎまくっていたエドだったが、夕方になっても一向に熱の下がらないアルに今年は止めようなどと言い始めていた。

だが、その背をアルが押した。




「僕、広島風お好み焼きとかき氷食べたい…。……兄さん悪いけど買ってきてくれない?」









本当はお好み焼きなんてこれっぽっちも食べたい気分ではなかったが、しかし自分のせいでエドの楽しみを潰してしまうというのは嫌だったし、どうにかしてエドを気兼ねさせる事なく花火大会へ行かせたかったのだ。




それからエドは少し躊躇いながらも『わかった』と言って、玄関先まで迎えに来たアルフォンスと共に花火大会へと出かけて行ったのである。




あれからまだ一時間。




眠ってしまえば時間なんてあっという間に過ぎていく。




そう考えたアルは今日一日をひたすら寝る事に専念しようと心に決めていた。

ありがたい事に、朝も昼も散々寝たアルの体だったが、辺りがすっかり暗くなった今でも風邪で弱っているためか眠気は全く収まる様子はなく、眠ろうと目を閉じれば簡単にアルを眠りの世界へと導いてくれる。




側にエドがいない寂しさからも、今エドを独占しているアルフォンスへの嫉妬心からもこの時だけは解放される。

「…………」




アルは心を無にして、ただその瞬間を待った。









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