ロマ神SS
□背が伸びる川
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「うわっ!どうしたんだよこれ?!」
「父さんがさっき採ってきたんだよ♪」
AM6:17
エドは先程、アルに「庭にすごいものがある」と言って叩き起こされた。
そして眠気眼のエドがアルに連れられるままに庭にでてみると、何故かそこには昨日まではなかった大きな竹が一本横たわっていた。
「な、何で竹?」
「んもう、兄さん。今日は七夕だよ」
兄弟がリビングへ向かうと、父と母が短冊やら竹につける飾りやらを仲良く作っていた。
「やぁ。おはようエドワード。…あの竹すごいだろう!父さんが採ってきたんだぞ!」
「…どこで採ってきたか知らないけどあんたちゃんと許可取ったんだろうな」
「はっはっは。…さぁ、エドワードも一緒に飾り作ろうな」
「おいこらっ!」
「まぁまぁ兄さん、そんなに堅いこと言わないで…ほらみんなで飾り作ろう?」
アルは父に向かって更につっかかっていきそうなエドをやんわりと宥めながら席につかせた。
「やだよガキじゃあるまいし」
「えっ。兄さん?」
しかしエドはすぐに席を立ってしまう。
「それより俺はもう一回寝る…」
そして二度寝する為に自分の部屋へ向かおうと背を向けた。
が、その時
「エドワード…母さん、みんなで楽しく七夕やりたいな…」
背後から母の寂し気な声が聞こえてきて、ダラダラと汗をかきながらそちらを振り返った。
「エドワード…」
するとそこには今にも泣き出しそうな顔の母がしゅんとこちらを見つめていた。
「わ、わ、わ、わかったよ!実は今ちょうど俺もみんなで楽しく七夕したいなーなんて思ってたんだよなー!!」
「…本当に…?」
「ほんとほんと!今のはちょっと照れくさかっただけで本当は俺七夕大好きだから!あははー!さーて何作ろうかなー!」
エドは母と二人きりで暮らしていた時から、もうずっとこの寂し気な顔に勝てた試しがなかった。
いつもは穏やかに微笑む母が時折泣きそうな顔を見せるたび(きっと夫を想っていたのだろう)エドはいつも慰め、元気付けてきた。
『母にはいつも笑っていてほしい。』
その願いの為なら、エドはいつでも『可愛い息子』になれるのだった。
「…んだよ」
「「別に。」」
ニコニコ顔のまま再び席に着いたエドは、母が飾り作りに集中し始めたのを見計らって何とも形容しがたい表情で自分を見つめてくる父と弟を睨んだ。
*