ロマ神SS
□背が伸びる川
2ページ/16ページ
さらさらさらさら…
「うし!できた」
「兄さん兄さん、何書いた?何書いた?」
「ぁっ、ば、こっち見んなよ!」
七夕飾りを作り終えたエルリック家は現在短冊にとりかかっている。
「いいじゃない見せてくれたって」
「うるせぇな。願い事は人に見せたらその時点で効果なくなるんだぞ」
「そんな決まり事あったっけ」
「あった!」
エドはそう言い切ってから今書いたばかりの短冊を裏返して机の上に伏せた。
「さぁさぁ、みんな願い事を書けたみたいだから竹を飾り始めようか!」
するとそんな兄弟のやりとりを見ていた父は、ニコニコと笑いながら元気よく席を立った。
AM7:30
「おはようございます」
「おはよう」
「はよ」
いつも通りの待ち合わせ場所からエド、アル、アルフォンスは学校に向かって歩きだした。
「今日は晴れて良かったですよね〜」
「何で?」
「いやだなエドワードさん。だって今日はー…」
「ハイデリヒさん!そう言えば昨日始まった新ドラマ見たっ?」
「え?何が?」
「新・ドラマ!」
アルフォンスは突然強引に割り込んできたアルに少し驚いたが、特に気にせずに見なかったよと答えた。
「じゃああらすじ説明するね!」
「は?…あぁ、うん」
(何だろう急に…)
キョトン顔のアルフォンスに、しかしそれからアルは学校に着くまでの間休まず新ドラマについてを熱く語り続けたのだった。
…実はアルがこんな風に喋り続けるのには訳があった。
アルは今七夕についてエドにしゃべってほしくないのだ。
間違ってもエドに、「実は今夜家族で七夕楽しむ予定なんだけどお前も一緒にどうだ?」などとアルフォンスに言わせないためのささやかな戦略だった。
『兄さんあれが天の川だよ』
『綺麗だな』
『兄さんの方が綺麗だよ…』
『お約束だな』
『ふふ、だって本当にそう思うんだからしょうがないじゃない』
『ばーか』
『何かこの状況ってロマンチックだね』
『二人で星眺めてるだけだろ』
『そうだね。でも僕は隣に兄さんがいたらいつでもどこでもロマンチックに感じちゃうんだ』
『お、俺はそうならねぇけど』
『じゃあキスしようか』
『あ!ばか…母さんたちに見られたら』
『大丈夫…母さんたちは今頃…』
アルは相変わらずマシンガントークを続けながら、今夜どうやって完璧に二人きりになるかを考えていた。
*