OTHER
□夜の闇に紛れて・完
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『悪いんだけど、暫く泊めてくれねーか?』
そう言ってドアの前に立っていたのは小さなトランクボックス一つを手にしたエドワードさんで。
彼は少し前に先生のところにロケットの研究がしたいとやってきた。
初めのうちは研究所の誰よりも熱心で、誰よりも飲み込みも早くて、誰もが彼に触発されて研究を進めていった。
だけど、すぐに何かを悟ったように、次第に研究室に顔を出さなくなり、数ヶ月前にはぱったりと来なくなってしまった。
久しぶりに訪ねてきてどうしたのかと訊けば、一緒に暮らしていたお父さんが居なくなってしまい、他に頼れる場所がなかったので僕のところに転がり込んできたのだという。
彼が来てから分かったこと。
いつも遠くを見る目で空を見ていること。
いつもどこか淋しそうに笑うこと。
いつも同じ夢を見て、愛おしそうに名前を呟いていること。
そして僕がエドワードさんのことを、『スキ』だということ…。