ハロウィン

□零一と過ごす。
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「よく来たな」


そう言った零一の格好はドラキュラだった。


と言っても、そこらのデパートで売っているような『簡単なりきりドラキュラセット!』ではなく。


首を覆い隠すような白いシルクのシャツ。
飾られた真紅のカメオ。
長い上着に施された金色の刺繍が美しく。


まるで中世の貴族を思わせる姿。


そこに長い爪、鋭い牙、黒く大きなマントを肩にかければ―


美しき、吸血鬼の出来上がり。


普段つけている眼鏡を外していることも大きな影響をあたえていた。


「どうした。何を見ている」


しばし呼吸を忘れてしまった少女を零一が見つめる。


「フ…。私に見惚れでもしたか?」


零一が微笑む。


ちらりと牙が見えた。


少女は頬をそめて零一から視線をはずした。


「…ドレスがよく似合っているな」


静かな声で零一が言った。


少女の服装も中世だった。


肩まで開いたドレスの胸元。
いくつも重なってドレープする袖のフリル。
スカートは雲のようにふんわりと広がり、床についている。


色はハロウィンなので黒だったが。


「麗しの魔女というところか」


瞳をほそめて零一が微笑む。


「さて、今宵はハロウィン。姫君に問おう」


零一がばさりとマントをひるがえして立ち上がった。


「Trick or treat」


ハロウィンの定番。
お菓子をくれねば悪戯するぞ―


少女はさっき支配人から渡された飴をさし出そうとした。


が。


それは零一の手には届かなかった。


もとい。


届かせなかった。


零一が差し出そうとした少女の手首をにぎっていたからだった。


少女が戸惑ったように零一を見る。


「私に飴など必要ない。欲しいのは君自身だ。甘い、君の体を堪能したい」


驚いたような顔をする少女の前で、零一は両手でマントを広げた。


漆黒のそれはコウモリにも、翼のようにも見える。


「さあ、来るがいい。私の腕の中に」


零一が悪魔的に微笑む。


その腕の中に入れば、どんな目にあうか。
少女にも簡単に想像できた。


「さあ―」


それでも。


零一に惹かれている少女に選択肢はなかった。


呼ばれるままに、零一の前に歩いていく。


前について、相手を見上げると。


「いい子だ」


優しげに微笑んでいた。


その笑顔に少女がほっとした瞬間。


ばさり。


零一は広げていた両手を締めた。


マントの中に少女を囲い、言う。


「今宵の私は吸血鬼だ。存分に君の血を吸うことにしよう」


零一が少女の白い首すじに牙を押し当てた。



→fin←


支配人の益田です。
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