ハロウィン

□珪と過ごす。
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黒い大きな耳。
細く、長い尻尾。


珪の格好は黒猫だった。


黒い細身のスーツにミミとシッポをつけている。


「…どう、思う?」


少し困ったような顔をした珪が少女の手をにぎりながら聞いてきた。


少女が首をかしげると。


「…服、いや、これ…」


自分の耳と尻尾をなでた。


少女が似合うというように微笑むと。


「…そうか…」


やっと、ほっとしたように息をついた。


そうすると普段の珪の雰囲気が戻ってきて。


遠くを見つめる視線。
けだるそうな雰囲気。


珪はとても上等な、そうポンペイのように見えた。


漆黒の猫。


少女が微笑むと、珪も笑った。


「…お前も可愛い…」


少女の格好も黒猫だった。


葉月と違うところは服が特別ということ。


支配人から渡されたその衣装は、本物の毛皮のような素材で作られていた。


タートルの上半身と。
バレエのチュチュのように広がったドレススカート。


ごていねいにおそろいのニーソックスまであって。


「…そうしてると本当に猫みたいに見える…」


葉月が言う。


「…可愛い」


今度は両手を握ってきた。


「…俺、お前を飼いたい…」


だめか?


そう聞きながら。


珪のくちびるが少女の手の甲に触れていた。


ゆっくりと。


熱いくちびるが皮膚を押す。


「…今夜から俺の部屋にくればいい…」


指をからめて、珪が少女を見つめる。


「…来いよ」


今宵はハロウィン。


それでも珪にはどうでもいいことのようで。


彼が求めるのは。
興味があるのは。


目の前にいる一匹の子猫だけ―


「…来いよ」


珪がもう一度、ささやいた。



→fin←


支配人の益田です。
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