ハロウィン

□貴文と過ごす。
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貴文を見て。


あれ、と少女は遠くにいる珪をふりかえった。


ハロウィンということでスタッフ全員がそれぞれ衣装を着ているのだが。


零一はドラキュラ。
勝己は魔人。
珪は黒猫。


「僕も猫なんです」


貴文が音もなく後ろから歩いてきて、少女の体を抱きしめた。


少女の目の端でぱたぱたとオレンジでふさふさしたものが揺れている。


尻尾。


猫は猫でもオレンジの猫だった。


「珪くんとペアなんです」


貴文が楽しそうに言った。


「ほら、僕達猫が好きでしょう? だから支配人が色違いを用意してくれたんですよ」


とても嬉しいです、と貴文が笑う。


「でも君ともペアだね」


用意された服は若王子と同じくオレンジ色で、ベルベットのようにさらりとした光沢と手触りだった。


それが上下にわかれていて。
腰骨にやっとひっかかっているような危ういスカート。
もちろん腹部と背中は大きく露出している。


「似合います。エッチな子猫ちゃんに見えます」


貴文がもっと微笑む。


そのたびに尻尾がふわりふわりと揺れて本当に猫のようだった。


思わず少女が若王子の喉をなでる。


「え―」


とたん。


貴文の目が開いた。


その驚いた様子に、少女はすぐに謝った。


ごめんなさい。
本当の猫のように見えて。
つい―


少女はそう謝った。


「そう…」


言いながら。


貴文の瞳が薄暗い店内で光る。


「じゃあ、もっとして?」


撫でてください、と。


少女の頬に自分の頬をすりよせる。


戸惑う少女の前で貴文が笑った。


「猫ならいいでしょう? 今は僕を男だと思わないで接して」


裏のないような真っ白な笑顔で言われて。


少女は安心したように微笑むと、ちいさく貴文の頭をなでた。


頭をなでて。
頬をなでて。
首をなでると。


「…気持ちいいです。もっとしてください」


貴文が瞳を閉じた。


その後も。
少女は貴文の望むままになでていたのだが。


いつのまにか、貴文の指が少女の腰をなでていた。


ちょうどそこには布が無く、素肌。


それを。


上から下に。
下から上に。


若王子の指が肌の上ををすべる。


ぞくりとして少女が体をふるわせると。


若王子がのぞきこむように少女を見ていた。


その瞳。


ふわりふわりと尻尾が揺れていても。
口元が微笑んでいても。


熱をおびたような色は、さきほどとは真逆。


貴文の顔が突然ちかづいてきて。


あ、と思う前に少女はキスされた。


少女がくちびるをおさえて貴文を見ると、


「猫はね、可愛いだけじゃないんですよ」


微笑んで。


「爪も牙もあるんだよ?」


そう言うと。


ゆっくりと少女の喉をなでた。


「食べられてみる?」


そっと少女の耳たぶをかじりながら。


にゃあ。


貴文が耳元でささやいた。



→fin←


支配人の益田です。
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