短い話

□73.マラソン
1ページ/3ページ




…はぁっ、はぁっ…。



…はっ…。



3週間前から、毎朝出勤前に走り込みをしている。
ひざに両手をつき、苦しい息を吐き出す。
かなりつらい。


そもそも私は文科系の人間なのだ。


それがなんのはずみか、体力と気力を要求される軍人になってしまった。
それだけならなんとかなりそうなもんだけど、腕と度胸、さらには冷静かつ的確な判断力…。


もう手に負えない。




(…どうして私なんだろ。)





「あーもう疲れたっ!」


ひとり大声を出して、グラウンドに仰向けになった。





筋力、瞬発力、持久力…。
私の体力は、軍人どころか一般的に見ても呆れるほど無いのだ。





大の字で目を閉じると、風が前髪を揺らすのが感じられた。









「寝てんのか?」





声をかけられて瞼を開くと、青い瞳が、私の顔をのぞき込んでいた。








.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ