短い話
□73.マラソン
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…はぁっ、はぁっ…。
…はっ…。
3週間前から、毎朝出勤前に走り込みをしている。
ひざに両手をつき、苦しい息を吐き出す。
かなりつらい。
そもそも私は文科系の人間なのだ。
それがなんのはずみか、体力と気力を要求される軍人になってしまった。
それだけならなんとかなりそうなもんだけど、腕と度胸、さらには冷静かつ的確な判断力…。
もう手に負えない。
(…どうして私なんだろ。)
「あーもう疲れたっ!」
ひとり大声を出して、グラウンドに仰向けになった。
筋力、瞬発力、持久力…。
私の体力は、軍人どころか一般的に見ても呆れるほど無いのだ。
大の字で目を閉じると、風が前髪を揺らすのが感じられた。
「寝てんのか?」
声をかけられて瞼を開くと、青い瞳が、私の顔をのぞき込んでいた。
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