短い話
□75.小さな、小さな
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今日は、楽しみにしていた外回りの日。
門衛さんに敬礼をすると、いってらっしゃいと声をかけられる。
「いってきます。」
「いつもそうなのか?」
門を出て数歩行ったところで一緒にいた大佐に訊かれたが、何のことだかわからなかった。
「何がですか?」
「挨拶だよ。いつもそんな風にしてるのか?」
何かいけないのだろうか。
(軍人は挨拶の時は笑わないのかな…。)
「はい。…だいたいこういう感じです。」
「そうか。」
大佐は私の顔を見ると、にっこりと微笑んで言った。
「伍長を見ていると、思い出すんだよ。こんな風に偉くなる前の自分をね。」
その言葉を聞いて、私はなんだか嬉しかった。
End