Twins
□5
3ページ/3ページ
どういう約束?
どうして、会ってはいけないの?
そう聞きたかったけど、僕は口をつぐんだ。
「少しでも魔法の知識を詰めこんでおきなさい。大前提にある魔法使いの歴史、自分の魔法界における立場、いろんなものをね。」
「はい。」「…はい。」
「勉強なんて最初はみんな出来ないから、安心していいわ。ただ、あなたたちは自分たちを知らなければ、とれない立場があるから。」
リオンさんは僕たちを離すと、頬を撫でた。
その表情は、本当に辛そうで。
「…大丈夫だよ、リオンさん。」
気が付けばそう呟いていた。
「ね、アナトール。」
「うん。僕たち、二人だから…大丈夫だよ。」
二人で顔を見合わせて、微笑って。
リオンさんを安心させたくて。
リオンさんの笑顔を見て、僕たちが安心したように。
「だから、大丈夫…。」
最初、リオンさんは驚いたような顔をして。
その次に泣きそうな顔になって、また僕たちを抱き締めた。
「…優しいところはお父さん似かしら…。」
リオンさんは、小さな、小さな声で囁いた。
悲しそうな、でも嬉しそうな声。
リオンさんは、立ち上がると、僕たちの額に二回ずつキスをした。
「あなたたちの上に、いつも幸福が降り注ぎますように…。」
「リオンさんの上にも。」
「僕たち以上の幸福が降り注ぎますように!」
笑って。
笑って。
僕たちは玄関に立つ。
リオンさんはその後ろに立っていて。
僕たちがチャイムを押した時。
「…またね。」
「「え…?」」
そんな声に後ろを振り向いた。
その時には、リオンさんの姿はどこにも見られなかった。
.