Twins

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いまだにああなった理由が全然わかんないけど。

あのときは一週間閉じ込められてさぁ。

アナトールがいなきゃさすがに死ぬところだったよ。

さりげなーく、バレないようにダドリーのお菓子持ってきてくれてね!

あっはっは。


まぁ冗談はここまでにして、今日だけはおかしなことが起こったら駄目だよね。

だって、いくら普段虐待されていると言っても、今日は動物園に行けるんだもの。

僕たちは殊勝な態度で頷いた。


そして僕はアナトールの手をとると、ようやく車に乗り込んだ。









動物園は家族連れで込み合っていた。

僕たちは はぐれないように手を繋ぐ。

ってもちろん僕とアナトールのことね!ダドリーなんかとは手繋がないよ!)

ダーズリー夫妻は入り口でダドリーとピアーズ(ダドリーの子分。子供時分からの階級に絶望)にアイスクリームを買ってあげていた。

あわてて僕たちをアイス・スタンドから遠ざけようとしたみたいだけど、売り子の叔母さんが坊やは何がいいの? と聞いたので、しょうがなく一番安いアイスを買ってくれた。

ホント近年まれに見る幸運だよ。


昼近くになると、ダドリーたちが動物に飽き始めて(まぁ、自分が動物みたいな奴らだし?)、アナトールを苛め始めるので、僕たちは慎重に二人から離れて歩くようにした。

(なんでアナトールか、っていうと……男の子が好きな子をいじめるパターン?)


昼食のあと、僕たちは爬虫類館に向かった。

あとから思えば、こんな良いことばかり続くはずなかったんだよなぁ。

動物園、アイスクリーム。
アナトールとの二人の時間。

そんな幸運がね。



ガラスの向こうにはいろいろなトカゲやヘビがいて、蛍光灯が妖しい光を放っている。

ダドリーたちは大きなニシキヘビのもとへと走っていった。

ただ、ニシキヘビはサービスをする気はないようで、ぐっすりと眠っていた。


「起こしてよ。」


ダドリーが叔父さんにせがんだ。

叔父さんはガラスをとんとん、と叩いたがニシキヘビに目覚める気配はない。


 お客様、ガラスに対する暴力行為はご遠慮ください。(にっこり)


「つまんないや。」


叔父さんはしばらくガラスをどんどんと叩いていたが、先にダドリーが飽きて別のところに行ってしまった。

僕とアナトールは、ダドリーたちと離れて、しばらくニシキヘビを眺めていた。


「こんなとこにいて…つまんないのはヘビのほうだよ。」

「そうだね。家の中を歩き回れる分、僕達の方がまだ自由かも。」


アナトールはガラスケースの横にある掲示板を見ていた。

だから、ニシキヘビの変化にすぐには気付かなかった。




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