Twins
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いまだにああなった理由が全然わかんないけど。
あのときは一週間閉じ込められてさぁ。
アナトールがいなきゃさすがに死ぬところだったよ。
さりげなーく、バレないようにダドリーのお菓子持ってきてくれてね!
あっはっは。
まぁ冗談はここまでにして、今日だけはおかしなことが起こったら駄目だよね。
だって、いくら普段虐待されていると言っても、今日は動物園に行けるんだもの。
僕たちは殊勝な態度で頷いた。
そして僕はアナトールの手をとると、ようやく車に乗り込んだ。
*
動物園は家族連れで込み合っていた。
僕たちは はぐれないように手を繋ぐ。
(ってもちろん僕とアナトールのことね!ダドリーなんかとは手繋がないよ!)
ダーズリー夫妻は入り口でダドリーとピアーズ(ダドリーの子分。子供時分からの階級に絶望)にアイスクリームを買ってあげていた。
あわてて僕たちをアイス・スタンドから遠ざけようとしたみたいだけど、売り子の叔母さんが坊やは何がいいの? と聞いたので、しょうがなく一番安いアイスを買ってくれた。
ホント近年まれに見る幸運だよ。
昼近くになると、ダドリーたちが動物に飽き始めて(まぁ、自分が動物みたいな奴らだし?)、アナトールを苛め始めるので、僕たちは慎重に二人から離れて歩くようにした。
(なんでアナトールか、っていうと……男の子が好きな子をいじめるパターン?)
昼食のあと、僕たちは爬虫類館に向かった。
あとから思えば、こんな良いことばかり続くはずなかったんだよなぁ。
動物園、アイスクリーム。
アナトールとの二人の時間。
そんな幸運がね。
ガラスの向こうにはいろいろなトカゲやヘビがいて、蛍光灯が妖しい光を放っている。
ダドリーたちは大きなニシキヘビのもとへと走っていった。
ただ、ニシキヘビはサービスをする気はないようで、ぐっすりと眠っていた。
「起こしてよ。」
ダドリーが叔父さんにせがんだ。
叔父さんはガラスをとんとん、と叩いたがニシキヘビに目覚める気配はない。
お客様、ガラスに対する暴力行為はご遠慮ください。(にっこり)
「つまんないや。」
叔父さんはしばらくガラスをどんどんと叩いていたが、先にダドリーが飽きて別のところに行ってしまった。
僕とアナトールは、ダドリーたちと離れて、しばらくニシキヘビを眺めていた。
「こんなとこにいて…つまんないのはヘビのほうだよ。」
「そうだね。家の中を歩き回れる分、僕達の方がまだ自由かも。」
アナトールはガラスケースの横にある掲示板を見ていた。
だから、ニシキヘビの変化にすぐには気付かなかった。
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