Twins

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「ほら見てハリー。動物園生まれだって。この子も故郷を知らない…ハリー?」


固まっている僕に気付いたのか、アナトールは僕の視線の先を追って、僕と同じように目を見張った。

僕たちの前で、ヘビがウィンクしていた。


 なんてユニークなんだ!

気に入ったよ。


「えっ…。」


アナトールはびっくりして僕にしがみついた。

僕もアナトールの手を握った。

ヘビはかまくびをバーノン叔父さんとダドリーの方へ伸ばし、目を天井へ向けた。

その様子は、明らかにこううったえていた。


いつもこうさ。


僕たちは最初驚いて言葉が出なかった。


「わかるよ。」


僕はようやくそれだけを呟いた。


「閉じ込められてたら、つまらないよね…。」


アナトールもそう呟いた。

ヘビが頷いた途端、僕たちの後ろでつんざくような大声がして、僕たちは飛び上がった。


「ダドリー!ダーズリー叔父さん!早く来て!ヘビが信じられないようなことしてるよ!」


ピアーズ(ダドリーの子分)だ。


ちっ。余計なことを大声で喋りヤガって。


ダドリーが走ってきて、僕の肋骨にパンチを食らわした。

ほら、避けたらアナトールに
当たっちゃうしね。


「ハリー!」


僕を支えようとしたアナトールは、僕と一緒に倒れてしまった。

そのあとは何が何だかわからなかった。

ニシキヘビを閉じ込めていたガラスが消えて、ニシキヘビが逃げ出した。

ニシキヘビは人間を威嚇するように牙をむき出しにし、あっという間にサークルをつくった。

そして去り際に、ヘビは確かに言った。


俺はブラジルへ行く。ありがとよ、アミーゴ。


その後、園長自らがペチュニア叔母さんに濃い甘い紅茶をいれてひたすらに謝り、ダドリーとピアーズは興奮状態に陥った。

最終的には、どう考えてもヘビは二人の側をただ通りすぎただけだったが、二人の話では、ヘビに喰い掛かれそうになった、とまで話がふくらんでいた。


僕たちにとってまずかったのは、ピアーズがだんだん冷静になって言った一言だった。


「二人はヘビと話してた。そうだろ?」


僕たちは家に帰るなり、物置に閉じ込められてしまった。

僕たちは物置の中で憤慨していた。


「まったく!ガラスが消えたのがなんで僕たちのせいになるわけ?」

「うん…でも、ヘビが喋ったことは本当だよね。」


僕たちは悩むのを止めて、早々に寝ることにした。

不思議なことがおこりすぎた。


やっぱり今日は嫌な日。

僕は、アナトールが僕の髪を撫でているのを感じながら、眠りについた。


「おやすみ、ハリー。良い夢を。」

「うん…おやすみ、アナトール…。」




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