Catants
□二
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この青年の身体を拭いてみれば、血液以上に、傷が少ないのがわかる。
慰療服を着た女性は、不思議だ、としきり呟いた。
校長がその理由を訊ねたら、慰療服を着た女性は、神妙な面持ちで、校長を振り返った。
ベッドで眠っている少年――青年は、病的なまでに白い肌をしていた。
辺りの照明は落としてあり、青年の頭上にあるランプだけが赤く灯りを揺らしていた。
そのベッドの周りに引かれたカーテン。
その側に置かれた椅子に校長は座っていた。
慰療服を着た女性はナプキンで手を拭うと、校長の隣りに腰かけた。
その表情は、憂鬱。
「血液の乾き方…量…そして傷口…。この青年は、あり得ない身体をしているようです。」
「あり得ない、とは?」
「回復が早すぎるのです。手当てしている間にも、どんどん……」
そこでふいに言葉を途切れさせる、慰療師。
固く閉ざされた瞳の奥に見えるのは、恐怖。
「この者は…日本人である可能性が……」
日本。
未だその力は謎に秘められている。
「だとすれば、政府が黙っておらんじゃろうの。…もっとも、ホグワーツの防御が破られたことで黙っておるはずがないのじゃが…。」
鉄壁といっても過言ではないほどの、ホグワーツの防御。
それが破られた今となっては、生徒の親御はもちろん、政府は黙ってはいない。
校長は節くれだった指を組み、その上にあごをのせて考えるそぶりを見せた。
「さて、どうするかのぅ…。」
「あの国は異常です! なんでも外交に行った特使が帰って来ないとか……」
「もし、この子が日本人ならば…どうなるかな?」
「それは……」
校長が聞く。
慰療師は口ごもり、視線を反らす。
「もし、政府に渡されるなら……拷問にかけられ…日本のあらゆる情報を、吐かせられるでしょう…。」
「見たところ、まだ16、7。そんな前途ある少年に、そのような道を与えて良いものかのぅ…。」
校長はホッホッ、と笑う。
慰療師はキッと校長を睨んだ。
「校長先生!!」