Twins

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(ハリー視点)




「さぁ、お家に帰りましょう。」


リオンさんが吐いたセリフは絶望的なものだった。

朝食での出来事だった。


「な、なんでですか?」


思わず、といった風にアナトールが言った。

必死な様子でリオンさんを一心に見つめている。

対するリオンさんは困った風に微笑み、アナトールの額にかかる髪をなであげた。


「学校が始まるまでずっとここにいる訳にもいかないでしょう?」

「どうして? どうして居てはいけないの?」

「アナトール…。」


ガタッと、音を立てて立ち上がったアナトールを宥めるようにリオンさんが名前を呼んだ。


「ここにずっといてはお父様たちが築いた財産を卒業までに全て使いきってしまうわ。」

「…それは、そうだけど…!」

「さぁ、アナトール。座ってちょうだい。紅茶を飲んで…」


しぶしぶと。

アナトールは促されるままに腰掛け、カップを受け取った。


「私はね、落ち着かない時はいつも紅茶を飲むの。熱くて濃い紅茶を。なんだかほっとするでしょう?」


リオンさんもカップを持ち上げ、優雅に口をつける。

洗練された動きに、僕は見とれた。


「…しょうがないよ、アナトール。」

「ハリー…。」

「リオンさんを困らせたい訳じゃないだろ? 我が儘言っちゃダメ。」

「………。」


アナトールの頬を両手で包み込むようにして、互いの額をあわせ。

互いのメガネがあたったけど、気にしない。


「ね、アナトール。」

「……うん。」


アナトールは少し寂しそうに、でもちゃんと頷いた。


「リオンさんごめんなさい…。」

「いいのよ、アナトール。私は迷惑だなんて思っていないから。」


リオンさんはアナトールの頬を撫でた。

そしてまた微笑う。


「教科書を読んでおくと良いわ。きっと楽しいでしょう。」

「そうだよ、アナトール。アナトールは本好きだし。」

「…うん。そうだよね。」


アナトールは次第に頬の筋肉を緩め、笑顔をつくった。


「どんなのが難しいんですか?」

「うぅ〜ん…そうねぇ。人によるけど、全体的に悪いのは魔法史ね。」

「え?! そんなに難しいんですか?」

「いいえ。授業が眠くてみんなが勉強しないだけ。」


クスクスとリオンさんは微笑う。

朝食はずっとそんな話をしていた。

食後にコーヒーを飲んでいる時、何処からかふくろうが飛んで来て、リオンさんの元へ手紙を届けに来た。




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