Twins

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そして待ちかねた九月一日。

僕たちはキングス・クロス駅内で立ち尽くしていた。


「九と…」

「四分の三番線…」


僕たちが見上げるのは九番線、…と十番線。

リオンさんが別れ際に渡してくれたチケットには九と四分の三番線、と書かれている。

が、ホームが見つからない。

学校へはそのホームに行かないと列車に乗れない。

僕とアナトールは焦っていた。


「ど、どうしよう…ハリー…。」

「う、うん…。」


不安だ。

大変、不安だ。

せっかく叔父さんたちと離れられたと思ったのに、この調子では半時間と待たずにリターンだ。

それだけは避けたい…。


しかも。

大荷物を抱えてふくろうをカートにのせている僕たちは邪魔な上、目立つ。

駅員に聞いてみるも、相手にされない。

と、その時。


「ハリー・ポッターか?」


後ろから声がして、振り向くと、背の高い、綺麗な男の子がいた。

黒い前髪は、僕には決して真似できないような形で、サラリと優雅にのせている。

瞳は深い深い青。


誕生日に会った、女性をうかがわせる、瞳。


靴からズボンから黒で統一しており、その色がさらに少年の美貌を引き立たせる。

十人中、十三人が振り向きそうなスタイル。

しかし、周りにいる人は、彼が存在しないかのように、まるで障害物がそこにあるかのように避けていく。

誰一人、振り返ったりしない。


「…ハリー・ポッターであってるか?」


その少年は再び問いかけた。

もう変声は終わっているらしく、声は低い。

恐らく、年上。


「え、う、うん。」

「そ、うだよ。」


どぎまぎしながら男の子に返事をする。

男の子はコクン、と頷くと、着いてこい、といった風に首を回した。


「駅まで、案内する。」

「え?」「あ、ありがとう。」

「………。」


訳がわからないままについていく。

男の子は無言で、歩いていく。


途端、ピタッと少年が止まって、振り向いた。


「レグルス。」

「…はい?」

「…レグルスだ。」


…………。


ああ!名前ね!


「ハリー・ポッターです。」

「アナトールです。」


そっちは僕らのこと知ってたから、名乗る必要もないかと思ったが、一応ね。

レグルスは納得したのか、コクリと頷くと、また歩き出した。

しばらく気まずい空気が流れて、レグルスが止まったのは、固い固いレンガの前。

九番線と十番線の間。


「これだ。」

「…………え?」「………。」


思わず、といった様子で聞き返したアナトール。

男の子はチラとこちらを見ると、レンガに向かった。


「あぶなっ」

い。


そう続けようとした言葉が、ふいに途切れた。

消えたのだ。

男の子がレンガの中に。

吸い込まれるように。





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