Catants

□一
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痛みと共に失ったのは、人と人との繋がり。










[ LOST BOY ]










パリンッ……

そんな音が空から響き、生徒は即座に顔を上げた。

夕食時。 みんなが広間に集まり、食事をしている最中。

それは現れた。

今までにない事態に、ざわざわとしていた会話がさざ波のように消え去り、みんなが押し黙った。

生徒たちの前の席に座る教員たちは、立ち上がり、警戒を顕にする。

空に浮かぶ、奇妙な映像。

それがまず目に入った。

大広間に映る空に、奇妙なねじれが拡がる。

やがてそれは一筋の亀裂となり、


開いた。



キィィィィ…ン!



ティースプーンが床に落ちた時のように。

軽い、しかし長く響く、澄んだ音。

それは一筋の亀裂から、聞こえてくる。

パックリと、紙のように切れた空間。

その向こうに、別の空間が見えた。

白く、長い髭と髪をもった初老の男性が手をパン…、と打つ。

すると初老の男性の肩に赤く、美しい鳥が現れた。

その鳥は言葉に出来ない不思議な鳴き声を、一声、広間に響き渡らす。

刹那、鳥の身体が霧散した。

鳥は赤い霧となり、明らかに鳥の体積を越えた量の霧が、生徒の頭上を覆う。

それを見つめる、初老の男性の瞳。

半月型メガネの奥にある瞳は、今はするどく尖っていた。

亀裂からの音は強くなる。

それは警告のようであり、助けを求める悲鳴にも聞こえた。


刹那、





りん…――――





柔らかな、音。

鈴の音に似たそれは、刹那だけ、響き渡った。



ドサッ

「ぐぅっ…!」

「キャアアァッ…!」「下がりなさい!」

空間の切れ目から、人が落ちてきた。

その人物は酷い怪我を負っているようで、倒れた床に赤い血がたちまち拡がった。

その人物は異国の服を着ているのか、ここ――イギリスでは見られることのない服を着ている。

生徒が悲鳴を上げ、すかさず教員が声をあらげさせる。

すぐさまその人物が倒れた所から、半径2メートルの無人の空間が出来た。

教員が駆け付けるものの、警戒している人物そのものが動かない。

みなが近付かない中、初老の男性が歩みよった。

年をとり、節くれだった手は、見た目より大きな力でその人物をひっくり返した。





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