Catants

□七
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窓の外を見つめていた。

外は綺麗だった。

何より、日の光が。

白く、温かく。

暖かく。

周りに見える景色も。

空気もあの国とは違う。

しかし日の光だけは、変わらない。

曇りに隠れることもあり、時には雨を降らす。

それでも、いつかは光はさす。

結局、これしかないのだ。

平等なものは。

人類、生きとし生ける者全てに、平等に降りそそぐもの。

それは光のみ。

光のささないところはない。

そしてその光は全て同じもの。

その光で、焼き焦がされる人がいても。

今はただ、綺麗だと思う。

青年は、ベッドの上に、体育座りをしている。

膝にシーツをかけて、そのせいで、シーツが広がり、円を画く。

その青年に、上から光の筋がさす。

長い黒髪に、光が反射して、頭上に光の輪を作る。

黒い髪は、肩にのり、背中に流れ。

それでもあまりあるほどに伸びている髪は、ベッドの上で好きな方向に広がる。

痛みは大分とれた。

あとは体力の回復を待つのみ。

青年は、そのまま瞳を閉ざし、形だけの眠りについた。
シャッ…

「あっ…」

慰療師が青年の病室のカーテンを開ける。

足音が聞こえていた青年は、カーテンが開けられる寸前には、そちらに目をやっていた。

開けた瞬間に、青年と目があった慰療師が、驚いて声を上げたのだった。

青年は黙って見つめる。

慰療師は、青年が日本人であろうことを、既にダンブルドアから聞かされている。

恐れの対象日本。

情報が入ってこない故の恐怖。

慰療師は、もはや条件反射で恐れるその心をおさえ、意を決してカーテンの中に入った。

「包帯を、取り替えるわ。」

身振りを加えての、女医の言葉。

青年は頷き、体育座りをしていた足をといた。

「傷も見るから、動かないでいて。傷が開いたら大変だから…。」

伝わっているか不安なまま、チラリと青年を目をやれば、青年は思っていたより静かな目をしていた。

青年は、もう感じ取っていた。



自分の命をとどめたのは、この人だと――。



傷を負い、体力を使い果たしていた自分。

意識のない自分を、恐れながらも癒し、治してくれた人。

傷自体がふさがるのは早い。

早い、が、体力の回復はどうしようもなかった。

体力の回復には、ゆっくりとした休養が必要。

それを与えてくれたのは、この人。

目の前の人であるのだと。


女医の言い付けに、青年はまた頷き、女医は青年の包帯をときにかかる。

青年には、ピリピリした雰囲気があった。

その空気を無意識に感じとったせいで、女医は怯えていたのだろう。

それは警戒ゆえ。

青年がこの国に怯えるがゆえの、威嚇であった。





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